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「米国インフレ懸念継続」でも金を買っていいのか 価格が下がるリスクもあるが反転も早い?

東洋経済オンライン / 2024年3月6日 9時30分

では、もしインフレが沈静化しなかった場合、市場はどのような影響を受けるのだろうか。株式市場にとって、インフレ再燃は通常大きな売り材料だが、「景気が強い」という一段の押し上げ要因となる可能性もあり、判断は非常に難しいところだ。

実際、アメリカのインフレが高止まりしている最大の理由は、経済や雇用が好調を維持していることだ。この部分だけ取って見れば、短期的には強気材料と受け取ることもできる。

FRBが政策金利を現行水準に長期間とどめておけばおくほど、あるいは追加利上げに踏み切らざるをえなくなれば、いずれ景気の大幅な減速につれて、株価にも調整圧力が強まるはずだと見ているが、経済が好調さを維持している間は、買いの勢いも、簡単には衰えることはないのかもしれない。

一方でFRBの早期利下げ観測の後退の影響をストレートに受けるのは、金利市場を除いては、やはり金市場になると見ておいたほうがよい。アメリカの長期金利上昇やドル高の進行が嫌気されれば、売りに押される可能性は高い。

「2024年の金価格は何回も最高値を更新しそうだ」(1月4日配信)では、金価格はインフレ再燃という新たなリスクでも生じない限り、史上最高値を何度も更新する展開になるとの見通しを示した。だが、インフレ再燃の可能性が消えないのだから、金についての見通しも柔軟に変更する必要があるだろう。

それでも、金価格は3月に入ってから急騰、最高値をつけている。だがこれは1日に発表された2月のISM製造業指数やミシガン大消費者指数が弱気の内容となり、景気の先行き不透明感が強まったことをきっかけにポジション調整の買い戻しが一気に加速したことによるものだろう。

月が替わったところで、資金の移動が起こりやすかったこともあって、
値幅はかなり大きなものとなっている。だが、あくまでも一時的な買い戻しによるものであり、中長期的なトレンドを変えることはないと考える。

金市場は、ほかの商品市場と異なり、現物市場での需給バランスがほとんど相場の変動要因にならないという特徴がある。それだけに、金融市場の動向には、どうしても大きく振り回されてしまうことになってしまう。

インフレ高止まりに対する懸念がアメリカの長期金利を高止まりさせ、ドル高が継続している状況下では、投機的な売りの勢いもかなりのものになると、見ておいたほうがよい。

もっとも、現在のようにファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が刻一刻と変化している状況下では、金市場でトレードするチャンスも、それだけ多くなると考えてよい。

金融緩和の状況が整えば、金の買い意欲が一段と高まる

経済の状況が変化するときに真っ先に反応するのは金利であり、その金利の動きに対する金の反応もまた大きなものとなるからだ。FRBの利上げ効果がいよいよ表れるようになり、景気や雇用の悪化が進めば、いずれかの時点でインフレも本格的に後退するはずだ。

もしFRBが自信を持って金融緩和を進められる状況が整えば、アメリカの長期金利低下やドル安が支えとなる中で、金に対する買い意欲が一段と強まる可能性が高い。2000年初めのITバブル崩壊や、2008年のリーマンショックの際も、危機を脱した直後には他の市場に先駆けて金価格が上昇に転じていることも忘れてはならない。あとは、そうした転換点がいつやってくるのかという、タイミングの問題だけとなりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅:NY在住コモディティトレーダー

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