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「知ったかぶりして間違えた」リーダーのその後 部下に命令するのをやめた組織で何が起きたか

東洋経済オンライン / 2024年3月7日 10時0分

海に出た初日、乗員も私も互いを品定めしていた。私は本能的に艦長という役割に同化し、身体に染みついている行動をとってしまった。そう、乗員に命令を与え、その命令に従わせた。

私は2つ目のモーターを稼働させろと命じた。だが、サンタフェはモーターがひとつしかない艦なので、その命令は技術的に実行できない。

命令を受けた士官は直ちに「2つ目のモーター稼働」と復唱したが、その命令は無意味だと彼はわかっていた。そしてやる気なく肩をすくめると、その命令を実行に移せと指示を出し、私の間違いはみなの知るところとなった。

この瞬間、私の人生が変わった。

今回のような明らかなミスをしでかしたとき、艦の士官がそれを指摘してくれると信頼できなければ、どうなるだろうか。誤って人を殺しかねないし、自分たちの命すら危うい。

私は、この状況をどうにかする必要があった。

私がそれまでに受けたリーダーシップ研修は、リーダーの意思決定のやり方と、決めたことをチームに実行させる方法を教えるものばかりだった。

だが、そうして学んだ解決策は、サンタフェで間違った命令を下したときには何の役にも立たなかった。

それもそのはずだ。問題は、間違った命令を下したことにあるのではなく、そもそも私が命令を下したことにあるのだから。

たった1年で生じた劇的な変化

みなの前で私の間違いが露呈したその日、私はサンタフェの士官たちとこんな約束を交わした。私は今後、一切命令を与えない。その代わり、われわれの目的は何で、何を成し遂げようとしているかを伝えると。

士官たちは、今後は艦長からの指示を待たないことに同意した。

今後は指示を待たず、彼らのほうから、目的をどのように成し遂げるつもりなのかを私に伝えるようにする。この変更により、使う言葉が少しばかり変わることになる。

士官たちは、「艦長、○○の許可をお願いしたいのですが」ではなく、「艦長、これから○○をします」と言うようになる。

そして、私たちは握手を交わし、それぞれの職務に戻った。

それから12カ月が過ぎ、サンタフェはある記録を樹立した。33名の優秀な水兵が、翌年の再乗艦願にひとり残らず署名して海軍に残ったのだ。また、海軍に要請されるあらゆる任務において、優秀な成績を修めた。

そればかりか、潜水艦操作の視察検査を受けたときには、歴代最高得点を叩き出した。解雇者はひとりも出していない。にもかかわらず、サンタフェのパフォーマンスと士気は、たった1年で、どちらも最低から最高に跳ね上がったのだ。

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