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「花山天皇を出家させる」藤原道兼の痛烈な裏切り 懐仁親王の即位を早めるために兼家親子で画策

東洋経済オンライン / 2024年3月9日 7時40分

「それでも、出家をお取りやめになられる理由はございません。なぜなら、神璽・宝剣も、すでに皇太子のもとにお渡りになってしまったからです」と。

道兼は、花山天皇が心変わりして宮中に戻ってしまっては大変だと、前もって、皇位の象徴とも言うべき、神璽・宝剣を皇太子方に勝手に渡していたのでした。

輝く月にも、雲がかかり、辺りは少し暗くなってきました。花山天皇は「出家は成就するのだ」と仰せになり、歩みを進められます。

ところが、そのとき、花山天皇は、普段から肌身離さず持っていた忯子が書いた手紙をうっかり忘れたことを思い出し「しばし待て」と取りに帰ろうとされるのです。

それを見た道兼は、すかさず「どうして、そのように未練がましく思われるのですか」と告げます。そのうえで「この機会を逃せば、ご出家にも支障が出て参りましょう」と、泣きながらその言葉を投げかけるのです(とは言え、道兼は「嘘泣き」だったようですが)。

道兼は花山天皇と土御門大路を東へと向かい、宮中から連れ出すことに成功します。そして、そこには、陰陽師・安倍晴明の邸がありました。邸を通ったときに、安倍晴明の声が聞こえてきたそうです。

それは「天皇がご退位なさると思われる天空の異変があったが、すでにご退位は済んでしまったと思われる。宮中に参上して、奏上しよう。車の支度を早くしてくれ」というものでした。安倍晴明は手を何度も叩きながら、繰り返しこの言葉を述べていました。

安倍晴明の言葉を聞かれた花山天皇は、覚悟のうえの出家とは言え「あはれ」(深いしみじみとした感動)に思われたに違いないと『大鏡』は記します。

安倍晴明は先ほどの言葉に続けて「式神1人、宮中へ参上せよ」と言ったといいます。式神とは、陰陽師の命令で自在に動く鬼神、霊的存在のことです。

人の目には見えない式神が邸の戸を開けると、そこには花山天皇の後ろ姿がありました。式神は安倍晴明に「帝は、ただ今、邸の前をお通りになったようです」と報告したそうです。

安倍晴明の邸をすぎ、花山天皇は花山寺(元慶寺。京都市山科区)にお着きになりました。そしてそこで剃髪されることになるのです。

花山天皇が花山寺に入ったことを見届けた道兼は「私はいったん、退出いたします。父・兼家にも、帝の出家前の変わらぬお姿をもう一度見せたく思うのです。案内申して、必ずここに戻ってきましょう」と理由を付けて、天皇のもとを離れようとします。

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