村上ファンド「あおぞら銀行」に触手を伸ばす意図 あっという間に筆頭株主、「あの銀行」と再編も
東洋経済オンライン / 2024年3月9日 7時20分
あおぞら銀行がアクティビスト(物言う株主)に狙われている。大量保有報告書によれば、2月27日時点で旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスと野村絢氏の保有比率が計8.9%に達し、筆頭株主に躍り出た。
〔写真〕SBIホールディングスは2021年に新生銀行を子会社化した
シティらによる急速な株式取得の背景には、何があるのか。アクティビストに詳しい関係者間でささやかれているのは、「とある銀行」との再編劇だ。
1カ月で急速に買い増し
シティらがあおぞら銀株の取得を始めたのは2月2日。前日に発表された赤字決算を受けて、株価が3年ぶりの安値圏に突入した日だ(経緯はこちら)。
翌日以降も市場内でほぼ毎日買い進め、2月27日までに推計200億円以上を投じている。
急速な買い増しの狙いは何か。典型的なのは、経営改革や株主還元の強化を求めて経営陣と対話をしたり、株主提案を提出したりすることだ。あおぞら銀と同様に、シティおよび野村氏が株式を取得した、石油元売り大手のコスモエネルギーホールディングスはその好例だ。
シティらは2022年4月に大量保有報告書を提出後、コスモ経営陣と対話を繰り返すが平行線をたどる。その後コスモ株を約20%まで買い増し、役員選任をめぐって会社側と激戦を繰り広げた。株主総会では会社提案が可決され、シティらは2023年末に持ち株を岩谷産業に売却し、手仕舞いした。
シティらによるあおぞら銀株の取得スピードは、コスモ株よりも速い。「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為を行う」という保有目的も同じだ。だが、あおぞら銀はコスモなど過去の投資先企業とは異なる事情を抱えている。
1つ目が「銀行法」の壁だ。議決権ベースで20%以上の株式を握るには、金融庁の認可が必須だ。50%超なら銀行持ち株会社に移行する必要があり、難易度は一層高まる。アクティビストが20%のハードルを突破できる可能性は低く、株式の買い増しによる経営権の奪取をちらつかせ、会社側に譲歩を迫る戦略は採りづらい。
自己株取得の余力なし
2つ目が出口戦略だ。例えばジャフコグループは2023年2月、自己株取得によってシティなどが保有していた株式約19%の大部分を買い戻した。買い付け価格にプレミアムを付与して株式を手放させる手法は、アクティビストに狙われた事業会社がしばしば用いる。
ところが、あおぞら銀は前述の赤字決算が原因で、自己株を取得できるほどの財務余力に乏しい。2024年3月末の自己資本比率(CET1比率)は6.6%程度となる見込みで、会社側が規律とする7%を下回る。同行は財務基盤の強化を理由に、今2024年3月期の下期配当を無配としており、アクティビストの保有株を高値で買い取る道理も立たない。
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