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JR東海と県のどっちに有利?静岡リニア「新会議」 座長は県と関係深いがトンネル工事に精通

東洋経済オンライン / 2024年3月11日 6時30分

ただ、報告書の中で有識者会議はJR東海による環境保全措置やモニタリング等の対策が着実に実行されているか、国が継続的に監視することを検討するよう求めている。そこで2月7日に村田茂樹鉄道局長が県に出向き、川勝知事に監視体制の準備について説明した。川勝知事も賛同し、「リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」が新たに設置されることになった。JR東海の宇野護副社長の言葉を借りれば、「1つステージが進んだ」ということになる。

その初会合が2月29日、国交省で開催された。座長の矢野弘典氏は公益財団法人産業雇用安定センターの会長であるが、静岡県の一般社団法人ふじのくにづくり支援センターの理事長も務める。同センターは2015年に発足し、静岡県の土地公社、道路公社、住宅公社の総務関連業務などを担う。2016年夏の県の広報誌には矢野氏、川勝知事、およびインドの元上院議員の3者による鼎談が掲載されており、矢野氏が川勝知事と親交があることがわかる。

一方で、矢野氏はNEXCO中日本の元会長として、任期中には東海北陸自動車道・飛騨トンネルの工事を完成させている。飛騨トンネルは全長10.7km。完成時点では関越トンネルに次ぐ国内2位の長さを誇った。しかも最大土被りは1000mで工事の難易度はリニアの南アルプストンネルに匹敵する。つまり、矢野氏は県とつながりが深く、トンネル掘削の実務にも長けているという点で県と国、双方が納得する絶妙な人選といえる。

矢野氏を座長に任命した理由について、国交省の担当者は「選定理由やプロセスについて答えは差し控える」としたが、「飛騨トンネルの掘削経験がある」という事実を挙げた。国は矢野氏の実務者としての手腕に期待しているようだ。森貴志副知事は矢野氏を「申し分ない。静岡をよくご存じで公平中正にやっていただける。心強い」と評価した。

会議の中で矢野氏は県とJR東海に対し「どこまで歩み寄れるか議論してほしい」と要請した。歩み寄りとは「妥協する」ということなのか。JR東海の宇野副社長はこの問いに対して「もっと“汗をかけ”という意味だと解釈している」として“妥協”という見方を否定した。「そういうご意見はしっかりと真摯に受け止め、一段と汗をかいていきたい」。森副知事も「これからも一段と汗をかいていく」と語った。

そのほかの委員は6人で、大東憲二・大同大学特任教授や徳永朋祥・東京大学教授のように過去の有識者会議に引き続いての委員もいれば、山岳トンネルの専門家として新たに招かれた小室俊二氏はNEXCO中日本の社長を務める。「高速道路の建設におけるさまざまな経験がお役に立てれば」と小室氏は話す。有識者会議では学識経験のある委員が現実には起きることが考えにくい「もしも」という仮定の質問を持ち出し、議論を長引かせたことがあったが、今後は「過去の経験」がこうした質問の歯止めになるかもしれない。

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