イスラム暦「ラマダン月」が試練となるイスラエル 人質解放交渉は水面下で行われ、平和の時は戻るか
東洋経済オンライン / 2024年3月11日 19時0分
筆者はイスラム教徒ではないので口にしなかったが、イフタールは基本的に無料で振る舞われている。「ラマダン太り」という言葉があるらしい。日中に断食しているためか、いつもより多く食べてしまうのだそうだ。辛い断食の月というイメージが一変した。特別なデザートが用意され、子供たちも夜更かしをして楽しそうだった。
ラマダン月に人質解放交渉が進展?
そんなラマダン月を迎えるに当たり、人質解放の交渉が進展すると思われていた。けれどもそれは実現しそうにない。その理由について「イスラエルが停戦に応じないから」、あるいは「ハマスがイスラエルの求める人質の生存者リストを出さないから」などと報道されている。
交渉内容の詳細は極秘なので真相はわからない。しかし、イスラエルのラマダンには他の国と違う事情があることは知っておくべきだろう。
ラマダン月には数十万人のイスラム教徒がエルサレムのアルアクサ・モスクへ礼拝に来る。エルサレムのシンボルとなっている金のモスク(岩のドーム)の隣にあるのが、アルアクサである。
そこはユダヤ人が「ハル・ハバイト」(神殿の丘)と呼び、イスラム教徒が「ハラム・アッシャリーフ」(高貴な聖所)と呼ぶエリアである(ここでは「神域」で統一する)。ヨルダンが維持管理を行ない、イスラエルが警備を担っている。
エルサレムのアルアクサは、イスラム教徒にとってメッカ、メディナに次ぐ聖地である。ラマダンとアルアクサ、神聖な時と空間という組み合わせは、イスラム教徒にとって特別な意味を持つ。
ラマダン期間中、エルサレム以外に住むイスラム教徒も、制限なしに神域へ入場することができる。神域で一夜を過ごすことも認められている。
イスラエルにとってラマダン月は、緊迫感の高まる時期でもある。あらゆる場所からたくさんのイスラム教徒がアルアクサに集まることもあり、イスラエル治安部隊との小競り合いやテロ・暴動が毎年のように発生しているからである。
イスラエルの治安当局は、戦争中である2024年は入場者の人数や年齢を規制するよう要請した。当初はその方向で動いていたようだが、最終的に内閣がこれを承認しなかった。
イスラエル国籍を持つパレスチナ人(いわゆる「アラブ系イスラエル人」)は、基本的にラマダンの第1週は制限なくアルアクサへ入場できる見込みである。ただし毎週治安状況の評価が行なわれ、それに応じて意思決定がなされる。
アラブ系イスラエル人はどう過ごすか
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