「人と話さない」と"記憶系"の働きが鈍くなる脅威 脳を活性化させるためにいますぐできる対策は
東洋経済オンライン / 2024年3月12日 15時0分
言葉には、不思議な力があります。「自分は○○だ」、「自分〇〇できる」といった自己規定の言葉を発したとたんに、不思議に自分自身がその方向に向かっていくようになります。
なんだか地味で、暗い感じがするかもしれない「ひとり言」ですが、実はさまざまな効用があり、奥が深いものだといえます。
では、何をどのようにつぶやくと、効果が出るのか? 脳内科医の加藤俊徳氏の新刊『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』をもとに、脳と言葉のメカニズムを脳科学的な視点から解き明かし、上手にひとり言と向き合うことで、自分の能力を高める方法を3回に渡り解説します。
ひとり言によって脳は成長する
人はいつからひとり言を言うようになるのでしょうか?
『遠城寺式・乳幼児分析的発達表』(九大小児科改訂版)によれば、1歳9カ月から2歳の頃に、「ワンワン(が)来た」という二語文を話すとされています。
著者の私見ですが、二語文が言えるようになれば、自分の耳で自分の声を聴いていると考えてもよいといえます。実際に2歳になると、左脳右脳の「聴覚系」脳番地はよく発達しており、音声を理解する「理解系」脳番地まで成長し始めています。
では、この乳児のひとり言の一端はいつから始まるのでしょうか。一般的に5カ月で「人に向かって声を出す」、6カ月で「おもちゃなどに向かって声を出す」、9カ月で「さかんにおしゃべりをする」とされています。
さらに10カ月になると、喃語(なんご)と呼ばれる「ばばば」「ままま」など意味のない言葉が減り、意思伝達が明瞭になってきます。この頃から左脳右脳の「聴覚系」脳番地の成長が加速してきます。
つまり、赤ちゃんは10カ月頃からひとり言を言い始めて、「運動系」「聴覚系」「伝達系」の脳番地が成長していきます。さらに1歳を過ぎると、海馬などの「記憶系」脳番地と「伝達系」脳番地が繋がり、どんどん言葉を覚えていきます。
このように、子どもの脳の成長にひとり言が大きく関わっていることは、明らかです。
しゃべらないと感情がなくなる
人は生まれてから「ひとり言」によって脳を発達させてきたわけですが、大人になるとその効能を忘れてしまうようです。
実際、患者さんと話をしていて愕然とすることがよくあります。
たとえば、「人と話すのが面倒くさい」と言って、ふだん会話らしい会話をしていない人が少なくありません。仕事はしていても、コミュニケーションが苦手だから口を利かないのです。
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