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見せ場なかった中国「全人代」の本当は怖い中身 「首相会見の中止」だけでない習近平への超集権

東洋経済オンライン / 2024年3月12日 7時50分

しかし、GDP(国内総生産)の3割を占めると言われる不動産の低迷が長期化し、個人消費も振るわないなかで、2024年に同じ結果を出すのは簡単ではない。2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減、不動産販売は同8.5%減となり、ともに1〜11月から下落幅が広がった。

政府は銀行に不動産デベロッパー向け融資を増やすよう求めたり、住宅ローン金利を引き下げたりしてテコ入れに懸命だ。だが、その効果はあまり見られない。1月のデータは2月と合わせて3月18日に発表される予定だが、民間が集計した不動産大手100社の1月の新築住宅販売額は前年同月比34.2%減だった。

中国の総人口は2022年に減少に転じており、住宅の購入層である若年人口も今後は大きく減少の一途だ。住宅需要は構造的に低下し、その価格にも強い下押し圧力がかかる。中国では家計資産の7割が不動産なだけに、消費マインドへの打撃は大きい。

こうした状況を踏まえIMF(国際通貨基金)は2024年の中国経済の実質成長率を前年比4.6%増と予想。2025年以降も成長率が低下し、ほどなく4%を割ると見込んでいる。全人代では、こうした状況を打開するような力強いメッセージは出されなかった。

そもそも2020年に習近平主席は「2035年に中国のGDPと1人当たりの収入を2020年比で倍にすることは可能だ」と宣言しており、実現のためには平均で年率4.7%以上の成長を続けることが必要だとされる。この目標を変えない限り「5%前後」は言い続ける必要があり、実現に向けて財政政策で景気を下支えするしかない。

全人代より重要な会議が開かれていない

成長力が低下した現在は、経済再生に向けたより現実的で大きなビジョンが必要だ。中国では5年に一度、経済政策の大きな方向性を共産党が示す。2023年はそのための「党中央委員会第3回全体会議(3中全会)」が開かれるタイミングだったが実現せず、現時点で開催のメドも立っていない。実質的な重要性は3中全会のほうが全人代よりずっと大きい。

3中全会が開かれない理由としては、①肝心の経済政策が決まっていないから、②失脚した秦剛前外相の後任(現在は王毅・党中央政治局員が兼任)など重要人事が決まっていないから、③いまや習近平主席が決めればそれが国の方針になるので、わざわざ会議を開く必要が失われたから、の3つが考えられる。

いずれにせよ今後のビジョンが示されないことで中国経済の先行きに不確実性を感じた外資は、中国への投資意欲を削がれている。2023年の中国の対内直接投資額は、前年比81.7%減の330億ドルと大幅に落ち込んだ。わずか2年前の2021年には過去最高の3441億ドルだったが、実に1割以下になった。

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