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株高の追い風で「明るい世代」は"多数派"になるか 「貯蓄から投資へ」の先に「投資も消費も」

東洋経済オンライン / 2024年3月13日 7時40分

日銀のマイナス金利解除が既定路線となる中で強気な見通しを示さざるを得ない状況だが、本音としては難しさも感じているのだろう。

高田氏は、「ノルムの根強さをみる観点で、負の経験」が重要だとし、「多くの人が就業すると考えられる22歳から、毎月一定金額を日経平均株価に投資したと仮定した場合の累積リターンがマイナスの期間」を世代別に示したデータを使い、次のように説明した。

「20歳代や30歳代の世代は、マイナスをほとんど経験していません。一方、40歳代・50歳代の世代は、バブル崩壊後の長期間の株価低迷から、就業してから半分近くの期間でマイナスを経験してきた」

「現在、企業等の組織で中核を占める40歳代・50歳代の世代を中心に、長期にわたる負の経験、トラウマのような経験があったことが、先にお話しした慎重化した企業行動や家計行動の根強さの一因になっていると考えられます」

「こうした企業行動等の転換には、1つの世代を形成する10年単位(decade)と、予想以上に時間を要する可能性も示唆されます」

「その慎重化した状況からの転換、上昇には当初の想定をはるかに超える時間を要するという解釈もできると思います」

高田氏の指摘は、前述した筆者の指摘と重なる。筆者は生涯(生まれてから今まで)の株価リターンと、学生時代(13~22歳)の株価リターンを基準としたが、過去の経験が重要かもしれないという問題意識は同じである。

過去の「トラウマ」がなくなり、「ノルム」が変わるのかどうか、評価には時間がかかるだろう。

実質GDPについても、生涯リターン(成長率)と学生時(13~22歳)リターン(成長率)を比較すると、株価のリターンとは異なる結果となった。

コロナ禍からの反動増による一時的な成長率の改善を除くと、年齢が低いほど低迷が続いていることがわかる。

むろん、株価は景気の先行指標であることから、今後、実体経済についても結果がついてくることが期待されるが、まだ時間がかかりそうである。

株価は成長を示唆しているのか、将来不安の反映か

両者の乖離の背景を考えることも重要だろう。

株価の上昇が今後の国内経済の成長を示唆するものなのか、金融緩和や円安による一時的な動きなのかを見極める必要がある。仮に一時的な動きであっても、それを国内経済の成長につなげていけるかどうかが重要とも言える。

幅広い世代で投資に対する関心が増えていることは実感できるが、最近では政府も老後に向けた「自助」の必要性を訴えているように、将来不安が高まっているからこそ「投資」に関心が高まっている面もありそうである。

株式市場に注目が集まっている背景も多様化していることが予想され、経済活動において前向きな世代が増えていくのかどうかについては、慎重にみていく必要もあるだろう。

総じて言えば、「貯蓄から投資へ」の後に「貯蓄から投資も消費も」につながるかどうかが重要である。

末廣 徹:大和証券 チーフエコノミスト

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