Metaと各国政府が繰り広げる大バトルの焦点 今やニュースはSNSの客寄せパンダですらない
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 7時30分
そもそもMetaやGoogleが展開するプラットフォームを基盤としたビジネスモデルは、多種多様なコンテンツで多くのユーザーをできるだけ長い時間、引き付け、広告収入を稼ぐ「アテンション・エコノミー」と呼ばれる手法の代表的なものだ。したがってニュースの提供は主たる目的ではなく、人々を集めるための手段のひとつでしかない。
プラットフォームが登場した初期には強い影響力を持っていた新聞やテレビはプラットフォームを過小評価し、ニュースコンテンツを流すことに対しては鷹揚に構えていた。
しかし、短期間で力関係は逆転してしまった。
広告収入を奪われつつ、購読者確保では依存
伝統メディアはプラットフォームを経由して購読者や視聴者を確保する比率が高まってきた。つまり、新聞やテレビなどの伝統メディアは、プラットフォームによって広告収入を奪われているのだが、同時に購読者獲得などの面ではプラットフォームへの依存度を高めているのだ。
問題はこのプラットフォームビジネスを成り立たせている「アテンション・エコノミー」がジャーナリズムや民主主義とはおよそ無縁の、利潤追求至上主義であることだ。
オーストラリアやカナダ政府を相手に支払い拒否をするMetaは「ニュースへのクエリ(データベースに対する処理要求)はわずか2~3%にすぎず、多くのユーザーの関心は友人や家族とのつながり、短編の動画やインフルエンサーのコンテンツである。Facebookにニュースはもう必要ない」と反論している。
Metaにとってニュースは主要な収入源になっていないばかりか、ニュースコンテンツを扱えば、各国の政府が介入して対価支払いを義務付ける法律などで規制をしてくる厄介者になっているのである。ならばニュースから撤退したほうが都合いいと考えるだろう。
しかし、現実はそれほど単純に切り分けられない。プラットフォームの普及とともにメディアの広告収入が激減し、その結果、メディア企業が雇用するジャーナリストが減り、記事が短くなり質も下がる。最後に休刊や撤退につながっている。
つまり伝統メディアはいつの間にかプラットフォームに経済的基盤を奪われてしまったのだ。
もちろんGoogleやMetaが各国でメディアに対しニュース使用の対価を支払ったからといって、新聞やテレビの経営が改善し問題がすべて解決するわけではない。
ジャーナリズムと民主主義が直面する劇的な変化
ジャーナリズムは権力の監視、多様な情報や意見の提供、それによって公平で公正な民主的社会の実現を目的にしており、利益の追求を目的とはしていない。そのため経済的基盤は極めて脆弱な存在である。そして新聞やテレビなどのメディアが長年、ジャーナリズムの担い手となって機能してきたことも事実だが、それが永続的なものではないことは言うまでもない。
問題は次の姿がまだ明確でないことだ。
苦境に陥ったメディアに対して、それを民主主義の危機と受け止めた一部の国家が法律という手段で救済策を講じる。国家という枠を飛び越えて世界規模での市場を手にした巨大企業はこうした動きに正面から抵抗する。10年、20年前には考えられなかったような力関係の構図の変化が進んでいる。
その先はどうなるのか。ジャーナリズムはどういう形で生き残っていくのか。
現在、ネット空間はSNSの登場に続いて、人工知能(AI)の技術開発と社会への実用化が猛スピードで進んでいる。ジャーナリズムも民主主義も劇的な変化の時代に直面しており、先の姿は予想しようもない状況にある。
薬師寺 克行:東洋大学教授
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