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1500年の伝統「京都・西陣織」まもなく消滅するか 世界も憧れる「日本の伝統工芸」の"最大の危機"

東洋経済オンライン / 2024年3月15日 11時30分

ご存じの方も多いかと思うが、この経糸と横糸の組み合わせの数万回の変更を「紙に穴をあけて管理・運用」したのがコンピューターの起源だ。

自動織機が普及した現代においても、工程や模様が極めて複雑な西陣織帯の製作では、職人が織機につきっきりで作業が進む。

完全な手織り機で作業を進める工程も多い。

江戸以前は「権力者の娘の嫁入りに使われる最高級の着物を作るためには、幾年もの時間が必要だった」と源兵衛氏は語る。日本以外の文化圏で、このような工芸を育み、そして伝承することは難しいだろうと感じる。

「徹底された分業」という強みが「技術の継承」を阻む

源兵衛氏によれば、成人式や冠婚葬祭など「日本ほど伝統衣装を着ている国は珍しい」ようだ。

ただし、着物や西陣織の産業としての実態は極めて厳しい。過去30年、日本の着物市場全体は5分の1へ、高級な「帯」が主力である西陣織の市場は10分の1にまで落ち込んでいる。

これほどまでの技術と伝統を持ち、世界的に高い評価を得ているにもかかわらず、京都・西陣織は産業として、その存続までもが危機的な状況にあるのが現状だ。

歴史や伝統をつないでいくのは、いつの時代も「人」で、現在の織元の一番の悩みは、厳しい経営環境の中での「職人の後継者育成」だという。

皮肉なことに、西陣織の美を支えてきた「高度に徹底された分業制」が西陣織の継承を苦しめているというのだ。

現在の、織元の「職人の後継者育成」における課題は以下のように整理できる。

職人の後継者育成における「4つの課題」

【課題1】「技術の継承に残された時間」が少ない

現在、「織元の職人の平均年齢は70代」と言われるまで高齢化が進んでいる。

各織元は需要減退の最中、生き残りに必死で、「後継の育成」へ投資をする余裕がない時期が数十年続いた結果だ。技術の後継に残された時間は、年々、少なくなっているのだ。

【課題2】徹底された分業制のため「多数の後継人」が必要

職人は細分化された一つの工程を極める専門工であり、それぞれの作業場も隔離されている。

たとえば、10の工程であれば10人の後継者が、技術の100の工程があるならば100人の後継者が、伝承に必要になる。分業がされているほど、それを後継することは難しくなるのだ。

また職人らは、自分の持ち場に対しては極めて高い責任感を持つのだが、その反面、他の工程や全体に対しての興味が下がる。

過去に、源兵衛氏は職人を一同に集めて、次の作品の製造全体について自由闊達な議論の場を用意したことがあったが、職人から出てきた言葉は「早く“自分が何をするか”を教えてほしい」というものであったそうだ。

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