堀場製作所「創業家の社長候補」が担う5カ年計画 次世代車と半導体分野などで営業利益1.7倍に
東洋経済オンライン / 2024年3月15日 7時50分
買収を駆使して自動車関連の事業を充実させてきたが、これら新領域での人員確保や生産ラインの増加など先行投資がかさみ、近年の同事業は利益が出にくい状況にあった。2017年にはマイラ社ののれん減損にかかる23億円の減損損失も計上している。
だが2024年には、設備投資で製造能力を3倍にしたフューエルコンの設備が貢献し、水素関連やバッテリーの試験装置の出荷が急増する。新領域が本格的に利益貢献を始める見込みだ。車両開発もEVなど次世代自動車を中心に伸びており、これらが新中計での成長を牽引する。
他方、半導体関連も成長を加速させる。主力製品は「マスフローコントローラー」と呼ばれるガスなどの流体の流量・質量を計測・制御するための小型装置だ。
半導体材料のウェハーを削るエッチング装置など、半導体製造装置に組み込まれている。堀場製作所によれば世界シェアは60%を誇る。半導体製造の設備投資需要が高まる局面でマスフローコントローラーの需要も拡大する。
実際、近年の半導体活況を追い風に半導体関連事業の営業利益は3年前の2.9倍へと拡大。2023年12月期は全社営業利益の86%を同事業で稼ぎ、3期連続での過去最高営業利益の更新に導いた。
半導体市場は搭載点数が増えるEV向けやAIの高度化により今後も拡大していく。堀場製作所は同社史上最大の投資額となる170億円を投じて京都・福知山に半導体向け装置の新工場を建設する。さらに出荷量を増やし需要増に応える。
半導体の製造工程は多岐にわたるが、装置やサービスを展開できる工程を増やすことでも成長を加速させる狙いだ。
新中計ではほかにも、バイオ・医療分野での新事業創出などもうたう。計画通りに進めば、期間中にはこれまでにない速度で事業規模が拡大することになる。
弾氏も口にしたように、堀場製作所はグループの従業員を「ホリバリアン」と呼び、ファミリーの一員と見なしている。創業者の雅夫氏が残した「おもしろおかしく」を社是とし、これを実現できる環境を自社の強みと見なし追求する。
心からおもしろいと感じられる仕事に取り組む中で独創的な技術が生まれ、それが会社の強みになると考える。柔軟で風通しよくあることも重視しており、従業員同士の交流機会が多いことでも知られる。
弾氏は経営力を試される期間
現在、利益柱となっている半導体向けのマスフローコントローラーも、元は大気汚染分析関連の機械を横展開したことから始まった。独自の技術を柔軟な発想で事業化した典型例だ。
独自技術を需要に合わせてすばやく応用できるのが堀場製作所の特徴で、社風自体が成長の源泉ともいえる。事業規模が拡大するにつれて、国内外で子会社や従業員が増える。その中でもユニークな企業文化を守れるかが新中計推進のカギといえそうだ。
新中計のリーダーである弾氏にとっては、計画の実行力やグループ全体を束ねる経営力を試される期間となる。主要子会社の社長を歴任するなどほかの社員とは異なるキャリアを積み重ねていることなどから、弾氏の将来的な社長就任は「既定路線」と見る向きが強い。
創業家社長候補らしい課題が課せられている。
吉野 月華:東洋経済 記者
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