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重度認知症の妻と介護した夫に起こった驚く事態 献身的だった夫、娘は「こうなる気がしていました」

東洋経済オンライン / 2024年3月16日 15時0分

奥さんのお世話を任されてからは、ぼくたち職員も、「あ~」とか「う~」とかの意味がなんとなくわかるようになってきました。長く介護をしていると、こうしたコミュニケーションが可能になることはそれなりにあります。介護士冥利といえるかもしれません。

そうした状況にご主人も安心されたのか、ずっと奥さんの部屋につきっきりでいるのではなく、ご自分の部屋にいる時間もつくるようになってきました。

もともと、ものすごい読書家で、奥さんの部屋にいるときも本を読んでいることが多く、本が山積みになっていたくらいでした。自分の部屋にいるときもおそらく本を読んでいる時間が長かったんだと思います。

そんなある日、ぼくが出勤すると「ご主人が亡くなった」と聞かされました。

何の前触れもない突然のことだったので、言葉を失いました。とくにどこかが悪いということはない人だったのですが、老衰に近い心不全だったようです。

娘さんに連絡すると、通夜や葬式に出席させるのは難しいので「母親には父の死は知らせないでおく」と決められました。それでも奥さんは何かを感じていたのかもしれません。それから1週間後、やはり何の前触れもなく亡くなったんです。

自分たちの介護に落ち度はなかったかと職員みんなが考えましたが、ドクターが言うには老衰とのことでした。それだけ自然死に近かったということです。

施設にやってこられた娘さんがぼくたちを責めることはありませんでした。それどころか、やさしい表情でこう言いました。

「こうなる気がしていました。ずっと二人は一緒でしたから」

かなり以前の話なのに、ご主人の笑顔と、ご主人にだけ見せていた奥さんの笑顔は忘れられません。伴侶に先立たれたあと、残された側が元気になり長生きするという話も聞きますが、このご夫婦のように連れ立つように亡くなるケースもあります。

妻の旅立ち後、その反動から夫はセクハラを

ご夫婦で入居されていたケースは他にもあります。

二人とも認知症になっていながら奥さんのほうが症状が進んでいた例もありました。1日中、わめき散らすようになっていたので、ご主人のほうは、迷惑かけて申し訳ないという感じで職員を気づかってくれるようにもなっていたんです。

しばらくすると、奥さんの身体が弱っていき、亡くなりました。

仲がいいご夫婦だったので、残されたご主人が心配でしたが、反動のようにセクハラを始めました。女性職員の身体を触ろうとしたり、入浴介助をする職員に「一緒に入らんか」といった言い方をするようにもなったのです。

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