台湾有事は避けられるか「百害あって一利なし」 「現状維持」を望む台湾の人々が大多数の現実
東洋経済オンライン / 2024年3月18日 19時0分
「外省人」の軍人は台湾が独立し「台湾人の台湾」になればまた外国に移住せざるを得ないと考え「台独(台湾独立派)」を「共産主義者」と同然に憎んで摘発に努めた。
蔣介石の長男で1978年に中華民国総統になった蔣経国(けいこく)は日本軍のシベリア出兵直後、ソ連が蔣介石を支援していた時期の1925年にソ連に留学、不安定なソ連の情勢の中で12年間苦労しただけに視野が広く、父の独裁政権を継承せず、台湾本島の戒厳令は1987年7月、38年ぶりに解除された。
蔣経国総統は1988年1月に死去、本省人の李登輝(り・とうき)副総統が総統となって民主化と「台湾化」を進め、1996年初の民選総統となった。
李登輝総統が中国と台湾は「特殊な国と国との関係」と「2国論」を唱えたが、中国は「1つの中国」を国是とし、アメリカ、日本を含む列国の同意を得て国連安保理事会の常任理事国にもなっていたから「2国論」に怒り、台湾近海に向けて弾道ミサイルを発射して威嚇した。アメリカは台湾東方沖に空母2隻を派遣して対抗する構えを示した。
李登輝総統が話した言葉
私はその時に台北にいたが、ミサイル発射はかえって台湾人の団結を強めたことを実感、他国の非難も招いて逆効果になったと報じた。
李登輝が総統となった当時、軍では数少ない「本省人」の将校を要職に就けて均衡を取ろうとしたが、周囲の将校たちは蔣介石についてきた元臣下やその子孫だから「本省人」抜擢の効果は疑わしい。
李登輝総統は「国と国との関係」とは言ったが独立は宣言せず「既に実態がそうなっているのだから独立を言う必要はない」と言っていた。また独立か統一かで「本省人」と「外省人」の対立が起きることは好ましくないとも私に話していた。
後編(後日公開)に続きます。
田岡 俊次:軍事評論家
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