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セブン、「400円以下」弁当の拡充が意味する課題 客数の戻りが緩慢、「フェア」依存にも限界

東洋経済オンライン / 2024年3月19日 7時10分

要因として考えられるのが、販促方法の違いだ。

コロナ禍以降、セブンが強化したのが「フェア」だった。「沖縄フェア」「韓国フェア」「中華フェア」など、テーマ性を持った新商品群を期間限定で投入、需要喚起を図った。

フェアの販売は総じて好調だった。外出自粛ムードの長期化で、日常の中での「プチ贅沢」を求める消費者心理をとらえたのだろう。2023年上期(3~8月期)にセブンの平均日販(1店舗あたり平均日商)が初めて70万円を突破したのも、このフェアの貢献が大きい。

ただ、名店や産地の名を冠するフェアでは、原材料や製法にこだわるため、おのずと一品単価は高くなりがちだ。フェアの好調は、一品単価の上昇に支えられていた面があった。

他方、競合2社はセブンよりも価格志向のキャンペーンが目立った。ファミマは2021年度から弁当や総菜類などの人気商品を値段はそのまま、内容量を大幅に増やすキャンペーンを定期的に実施。ローソンも同様の販促のほか、昨年9月にはカツ丼といった弁当など主要6品目の値下げを実施し、節約志向を強める顧客に経済性を訴求してきた。

定番商品をコンビニ3社で比べると、セブンは価格の高い商品が多い。製法や具材、内容量などが異なるため単純比較はできないが、「(セブンは)消費者から価格が高いというイメージをもたれている」(青山氏)。

製造メーカーの幹部も「他チェーンの商品より品質には自信があり、強気の値上げをしても販売は好調だった。しかし2023年下期から徐々に数量に影響が出ている」と明かす。消費者の節約志向が日に日に強まる中、グループからも「フェアに頼りすぎではないか」(セブン&アイ・ホールディングス関係者)という声が漏れる。

「梅」商品強化作戦は花開くか

セブン自身も課題には気づいている。すでに2023年度上期から商品開発の方針を転換。チルド弁当に限らず、これまで高付加価値品に偏っていた価格構成を見直し、松竹梅でおおむね1:2:1の構成となるように、「梅」の商品の開発を急いでいる。

ただ、こうした方針転換が開発現場に浸透するのには時間がかかる。「『いかにいい材料を使うか』を考える松、竹の商品と、『いかに無駄を削るか』を考え抜く梅の商品ではプロセスがまったく異なる」(青山氏)からだ。

「安い=質が低い」というイメージが残り、当初は担当者やメーカーから反対する声もあがったという。社内やメーカーへの説明を重ね、2023年終盤頃から「ようやく開発体制の足並みがそろってきた」(同)。

そしてここにきて増えてきたのが、400円以下の弁当類というわけだ。店頭では低価格商品の品数を増やすのと同時に、「うれしい値」や「安心価格」といった店内表示(POP)をつけるなど、見せ方の工夫も始めている。

コンビニ業界で圧倒的な強さを誇るセブンでさえ、低価格に対応できなければ、お客が競合に流出しかねないという強い危機感がある。それだけ、消費者の節約志向は根強い。一方で「1:2:1」という比率からも分かる通り、消費者は低価格一辺倒というわけでもない。小売りの現場の試行錯誤は今後も続きそうだ。

冨永 望:東洋経済 記者

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