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始まりは"のど痛"から「人食いバクテリア」の怖さ 抗菌剤服用を途中で勝手にやめるのは「超危険」

東洋経済オンライン / 2024年3月20日 7時30分

このケースは示唆に富む。というのも、最近、若年者で劇症型溶連菌感染症が増えているのだ。

1月24日、国立感染症研究所は「A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について」というレポートを発表した。

このレポートで注目すべきは、重症度が増している可能性があることだ。50歳未満の致死率(報告数に占める届け出時の死亡数)の割合が、従来は9.1%~19.7%だったものが、2023年以降は30.9%と上昇している。

国立感染症研究所は、病原性や伝播性が高いUK系統株が、国内に流入している影響があるのかもしれないと論じている。

溶連菌以外の感染症も増加

わが国で流行しているのは溶連菌だけではない。

現在、インフルエンザ、咽頭結膜熱(プール熱)が大流行しているし、昨年はこれら以外にヘルパンギーナ、流行性角結膜炎、RS(呼吸器合胞体)ウイルス、手足口病が大流行した。溶連菌、咽頭結膜熱、ヘルパンギーナの感染の規模は過去10年で最大だ。

さまざまな感染症が流行するのは、日本に限った話ではない。

昨年11月、中国の北京市などで、インフルエンザ、マイコプラズマ、ライノウイルス、RSウイルスが大流行しているし、2022~2023年の冬にかけて、アメリカではコロナウイルスに加え、RSウイルス、インフルエンザが同時流行し、「トリプルデミック」といわれた。

この3つのウイルス以外にもヒトメタニューモウイルスやアデノウイルスも大流行している。

ヨーロッパでは、溶連菌、髄膜炎菌、肺炎球菌などの流行が確認されている。昨今の麻疹(はしか)の世界的な流行も、このような状況を知れば、見え方が変わってくる。

なぜ、こんなことになるのか。2つの可能性が指摘されている。1つは集団免疫の低下だ。

コロナ流行中、世界各国は強い感染対策をとったため、さまざまな病原体の流行が抑制された。この結果、免疫を有する人の割合が低下し、最近の大流行につながったという訳だ。

コロナ感染の後遺症が原因?

もう1つの可能性は、コロナ感染の後遺症として、免疫力が低下することだ。このことは、いくつかの基礎研究から示唆されていたが、最近になって臨床研究の結果も報告されるようになった。

昨年5月、アメリカのケースウェスタンリザーブ大学の研究チームが、コロナ感染の既往がある小児がRSウイルスに感染するリスクは、既往がない小児の1.4倍であったと報告していることなどは、その一例だ。

この可能性は日本であまり議論されることはないが、2022年10月には、アメリカ・ワシントン大学の研究チームが「コロナパンデミックが市中の呼吸器ウイルスの流行に与える影響」という論文を、イギリス『ネイチャー感染症学レビュー』誌に発表するなど、その議論は進んでいる。

もし、そうならコロナ感染の既往を有する人には、重点的にワクチン接種すべきかもしれない。今後の研究が必要だ。

以上が溶連菌感染の流行の背景である。筆者はコロナパンデミックと絡めて議論すべきと考えている。今後の研究の成果に期待したい。

上 昌広:医療ガバナンス研究所理事長

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