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「妊娠したら辞めて」教育委員会のマタハラを"証言" 都のSC大量雇い止めは「女性差別の問題」だ

東洋経済オンライン / 2024年3月22日 12時0分

こうしたプレッシャーの中、出産を試みたSCもいる。

勤続13年の小林理恵さん(仮名、30代)は4歳と7歳の子どもを育てている。都教委が毎年開く連絡会で「『妊娠したら辞めてください』という指示はたしかにありました」としたうえで、「その理由として『みなさんの仕事は妊娠出産して、その間を誰か別の人に任せ、また戻ってくることができるような替えのきくものではないから』という説明をされました」と話す。

それでも、小林さんが1人目の子どもを妊娠したとき、真っ先に思ったことは「退職はしたくない」。小林さんにとってSCが大切な仕事であると同時に、妊娠を理由に辞めるとSCそのものへの信頼度が下がってしまうような気がしたからだという。

当時の勤務校は2校。このころは「妊娠出産休暇」も認められていなかった。このため、それぞれの学校の管理職らと相談して、溜まっていた有給休暇を活用すると同時に、週1回のペースだった出勤を出産の前後にまとめることで、なんとか最低限の“出産休暇”をつくり出した。

2人目のときは初産以上に不安だったという。出産前、最後の勤務の数日前に出産の兆しである「おしるし」があったのだ。しかし、すでにぎりぎりスケジュールで出勤調整をしているので休むわけにはいかない。小林さんは「どちらの出産も綱渡りでした。特に2人目は、学校で陣痛が来たらどうしよう、万が一のことがあったら後悔してもしきれないと思うと、あのときは本当に怖かったです」と打ち明ける。

もともとは教員を目指していたという小林さんは、教育実習先でいじめに遭っている子どもと出会ったことで公立学校のSCを志すようになる。資格取得後に働いた福祉施設で、多くのアルコール依存症の人たちとかかわる中「子どものころにもっとよい出会いがあれば、違った人生があったのでは」と感じたことで、その意思はより強くなったという。

臨床心理士の多くは経験を積むために学校だけでなく、福祉施設や病院、自治体などさまざまな職場で働く。その中で自身の専門を極めていく人もいれば、幅広い分野で活躍する人もいる。小林さんは小児科病院や大学でも働いているが、自らのアイデンティティはSCにあるという。

ほかのSCたちと同じく学校からの評価は高かったといい、「『あなたがいてくれてよかった』と言われるよりも、『SCがいてよかった』と言われることのほうがうれしかったです。学校にSCが必要な存在として定着してほしいと思ってきたので」と語る。

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