優良マンションの「認定制度」が抱える思わぬ死角 「居住者名簿」の扱いが管理会社によって違う
東洋経済オンライン / 2024年3月22日 8時0分
それゆえに管理計画の認定に当たっては、管理組合が主体性を持って管理を行っているかがチェックされる。例えば、長期修繕計画では、妥当な計画があるかどうかだけでなく、修繕積立金の残高が十分にあることも基準になっている。不足分を穴埋めするために、一時金の徴収や金融機関からの借り入れをしないといけないようでは認定を取れない。
健全な「コミュニティ形成」も必須条件
国はマンション内はもちろんのこと、マンション周辺の住民との間で、健全なコミュニティが形成されていることも認定要件に挙げている。マンション内では親睦会や除草活動を通じた住民間の活発な交流を、周辺の住民とは自治会活動を通じた、地域ぐるみの防災訓練などを推奨している。
「人の目」が日常の防犯上有効であることはいうまでもないが、災害発生時にこそ住民間の連携は効果を発揮する。防災委員会を設け、非常時に救助を必要とする独居高齢者を事前に把握し、管理組合として防災備蓄や発電機を備え、災害発生時の行動計画を盛り込んだ消防計画を策定していれば、認定に際しては有利に働く。
逆に、管理会社しか区分所有者や居住者の連絡先を知らないようだと、災害発生時に適切な対応はとれない。日常的にも、管理規約や使用細則に違反している住戸への対応が、管理会社の担当者次第で放置されかねない。
隣人との交流を避けたくてマンション暮らしを選択する人が一定割合存在するのは事実だが、それはマンションの資産価値を守るうえではマイナスに働く。例えば、独居高齢者が孤独死すれば、その居室は事故物件となり、買い手も借り手もつきにくくなる。そうなれば管理費・修繕積立金の滞納が始まる可能性が高い。近所付き合いの煩わしさが少ないマンション生活だが、コミュニティの形成は資産価値の維持には必須条件なのだ。
高経年マンションで多発している漏水事故にしても、その対応を管理会社に丸投げするリスクは高い。発生した事故が、個人としての対応で済ませて良いものなのか、或いは管理組合として対応すべきものかどうか、判断を必要とする場合があり、管理会社任せでは判断を誤る可能性がある。
保険金を請求して事故処理に当たる場合、管理会社が懇意にしている設備工事会社と結託すれば、管理組合に気付かれることなく過大請求をすることすら可能になる。そして損害保険を使えば、保険料の値上げという形でマンション管理組合に不利益をもたらす。
だからこそ、認定要件には「管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること」を挙げている。
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