ミスミG「部品の流通在庫がみえない」問題に一石 国内外の約300社と協力しリアルタイムで把握
東洋経済オンライン / 2024年3月22日 7時50分
大元のメーカーに販売をお願いしても、直接的な取引はごく少数の大口顧客に絞っていることがほとんどだ。在庫を豊富に抱える卸業者に頼んでも、エンドユーザーへ売れば顧客である代理店らと競合してしまうため、あえなく取引を断られる。
つまり、各プレーヤーが立場に縛られ、結果的に不便な状況が生じていた。ディージットは、流通事業を手がけるミスミGが部品供給の「元締め」的な存在となり、こうした課題の解決を図ろうという野心的な試みなのだ。
頭を抱える日々の部品調達部門
部品調達は製造業において効率化が遅れている分野だといえる。神奈川県藤沢市のFA企業「アイメス」で調達を担当する飯野直樹氏も頭を悩ませてきた一人。「1つの部品を入手するために20社に問い合わせた経験がある」という。
FA機器の受注を例にプロセスをたどってみよう。まず、営業が顧客から注文を取ってくる。その際に決まった仕様に合わせ、設計図面を書く。次に必要な部品をリスト化した表を作る。
調達部門の担当者は、これを基に各取引先へ部品を発注する。その種類は数百~数千に及ぶことも珍しくない。当然、1社だけで揃えられるわけはなく、数十~数百社から部品をかき集めることになる。得意先で欠品が生じれば、調達の担当者は血まなこになって探す羽目になる。
駆動部といった大きな物からナットなどの小型品まで、どれか1つでも欠ければ製品は完成しない。業者に片っ端から電話を掛け、回答を待つ間にECサイトを徘徊する。ミスミGによると、機械部品の調達に要する時間のうち、約9割が流通在庫の探索や複数業者への問い合わせだという。
なじみのない相手だと、足元を見られて高額を吹っかけられたり、にせ物をつかまされたりもする。あるメーカーの調達担当者は「切羽詰まって知らない海外業者からIC部品を買ったら、回路部分が空っぽのものが届いた」と明かす。体力のない中小企業にとっては、死活問題になりかねない。
ディージットがそうした現状を変えてくれるとの期待は大きい。飯野氏は次のように語る。「今後は調達に困ったら、とりあえずミスミを頼ればよい。部品の質が担保されるのも非常に大きく、危ない橋を渡らなくてもよくなる」。
調達部門の立場は決して強くない。営業部門からはコスト低減を求められ、製造部門からは「早く部品を入れろ」と急かされる。「ディージットの活用で大幅に所要時間を削減できる。今後は新たな取引先の開拓や価格交渉など、付加価値のある業務を増やしていきたい」(飯野氏)。
ミスミも調達側を苦しめていた
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