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「相手によって態度を変える人」のみにくい心理 "豹変"を恥ずかしいとも思わない

東洋経済オンライン / 2024年3月24日 16時0分

たしかに、今時の若者は叱責への耐性が低く、すぐ辞めるという話はあちこちで耳にする。だが、少なくともここで取り上げたIT系企業とアパレル会社では、課長もしくは店長の暴言や叱責などによって部下が何人も辞めており、上司の言動にまったく問題がなかったとは到底思えない。にもかかわらず、2人とも上層部から「温厚」と評されており、部下に対する“乱暴”ともいえるふるまいについても、「信じられない」という反応が返ってきている。

その一因として、2人とも“上”に対する態度と“下”に対する態度が全然違うことが挙げられる。私の外来に通院中のアパレル会社の店員によれば、本部から社長と役員が店舗の視察に来た際、店長は非常に礼儀正しく、きわめて丁寧な口調で話しており、日頃の言動と全然違うので、唖然としたという。

こうした違いは、自己保身欲求と上昇志向が強い人にしばしば認められる。その人に気に入られるかどうかで自分の出世が決まる“強い”相手、つまり人事権を握っている上層部に対しては極力下手に出て、自分の言いたいことも言わず従順にふるまう。

逆に、どんな暴言を吐いても、どれだけ厳しく叱責しても、自分の地位を脅かすことはありえない“弱い”相手、つまり何の権力もない部下に対しては、言いたい放題で、自分のやり方を押しつける。もしかしたら、“強い”相手の前では抑圧している分、その反動が出て、“弱い”相手に対してはより強圧的になるのかもしれない。

強い特権意識

この手の上司に共通する特徴として、特権意識が強く、「自分は上司なのだから少々のことは許されるはず」と思い込んでいることが挙げられる。こういう思い込みがあると、「普通の人に適用されるようなルールは自分には関係がない」「普通の人には許されないことでも自分だけは許される」と考えがちで、その結果パワハラまがいの言動を平気で繰り返す。

特権意識に拍車をかけるのが過去の成功体験だ。IT系企業の課長は、新しいソフトを開発して大ヒットさせた実績があり、アパレル会社の店長も、以前勤めていた複数の店舗で売り上げを伸ばした実績があるらしい。このように実績があると、どうしても特権意識を抱きやすい。しかも、自分のやり方で成功したという自負があるのか、それを他人にも押しつけがちになる。だからこそ、部下のやり方が少し違うだけで、怒鳴ったり叱責したりするのだ。

とはいえ、そういうことも許容されるのが世の常だ。上層部としては、稼ぎ頭に辞められたら困るというのが本音だろう。それほど稼げるわけでもない下っ端が何人メンタルを病もうが、退職しようが、大した痛手ではなく、代わりはいくらでもいるので、また雇えばいいくらいに上層部は思っている可能性が高い。上層部の顔色を常にうかがっている上司ほど、こうした認識を敏感に感じ取るので、さらに特権意識に拍車がかかる。

想像力の欠如

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