医師が推奨「がん患者の緩和ケア」なぜ大事なのか 緩和ケアには延命効果が、家族も対象に
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 17時0分
つまり、患者さん本人が元気なうちに、自分の病状を理解して、治療法を選べるようになったことがとても大きかったのです。
緩和ケアには副作用はありませんし、メリットの少ない終末期の抗がん剤を減らして生活の質を上げることもできました。
こうして科学的根拠が明らかになり、緩和ケアは標準治療の1つと考えられるようになりました。
がんと診断された直後から緩和ケアを始めるのが欧米の主流
日本ではまだまだ誤解されている面がありますが、緩和ケアは治療の手立てがなくなった患者さんに対して行われるものではありません。欧米では、がんと診断された直後から、標準治療と緩和ケアは同時進行で行われるべきという考え方が主流になっています。
なぜなら、患者さんやご家族にとって、がんと診断された直後が最も精神的な苦しみが強いからです。今後の治療や生活のことなど心の負担も大きくなります。そうしたことからも早くからケアする必要があると、昨今は考えられています。
WHO(世界保健機関)も、生活の質や人生の質を高めるのが緩和ケアの本質だと定義しています。
さて、緩和ケアでは、患者さんの苦痛を4つの要素でとらえています。心理的苦痛、身体的苦痛、スピリチュアルペイン、社会的苦痛です。
社会的な苦痛には、思うようにお金が稼げなくなることだけでなく、社会から取り残される痛み、好きだった仕事ができなくなった痛みも含みます。社会的な孤独や、それによって生じる夫婦関係のひずみにも、医療として対応しようということです。
スピリチュアルペインについては、日本では信仰や霊的なものと結びつけて考える傾向がありますが、もっと広い概念です。どちらかというと人生の意味や目的に関わることで、がんになった私は生きていていいのだろうかとか、死ぬのが怖いというようなものです。死に対する恐怖は人としてとても当たり前のことですね。
一方で、心理的な痛みというのはどちらかというと精神科の範疇になります。うつ状態になったり、適応障害になったりしたときは医師の診療の対象です。
スピリチュアルペインに対する対応は、簡単ではないと思いますが、医療者が寄り添い、共感的に対応する、医療側と患者さんとでコミュニケーションをとるところから始まると私は考えています。
患者の家族も「第2の患者」として緩和ケアの対象
そもそも病気の治療は、がんに限らず、単に治すことだけが目的ではありません。緩和ケアの究極の目標も、患者さんの人生を、より良いものにしていくことです。
この記事に関連するニュース
-
「がんの治療法」を提示されたら…患者がまっさきに聞くべき“たった1つの質問”【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月3日 10時0分
-
「がんと認知症」ダブル罹患時代を生き抜く!決して人ごとではない、聞いておきたい現場の声
週刊女性PRIME / 2024年6月30日 17時0分
-
医師が告げる余命は当たらない?…“がんのスペシャリスト”が「余命宣告は即刻やめるべき」と考えるワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月26日 10時0分
-
「食生活のせい」「家系のせい」と決めつけないで…がんができる「最大の要因」とは【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月19日 10時0分
-
鵜呑みはNG…医師に「がんです」と言われたらまず確認したい「3つ」のこと【専門医が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月12日 10時0分
ランキング
-
1日産新型「セレナ“ミニ”」登場は? シエンタ&フリード対抗の「小型ミニバン」は? 実はあった「小さな3列車」 ユーザーの声いかに
くるまのニュース / 2024年7月6日 7時40分
-
2浴室リフォームを決意、どんな補助金が使える? 「省エネリフォーム」に関する補助金は多い
東洋経済オンライン / 2024年7月7日 8時50分
-
3ダイソーでかなう、税込110円の「生ごみ臭」対策! 入れるだけ・かけるだけで、もう臭わない
オールアバウト / 2024年7月7日 17時15分
-
4「二重あご」になっちゃう理由 実は肥満だけじゃない 原因&改善法を美容外科医が解説
オトナンサー / 2024年7月7日 7時10分
-
5「ぐっすり眠れない人」今すぐ摂るべき5つの食材 「眠りを誘うホルモン」が睡眠の質を高める
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 21時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)