3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 19時0分
ある西側外交官は今回のテロ事件後、筆者に対しこう語った。「モスクワの事件がISの犯行であることは間違いない。それどころか、ISが世界各地で同様のテロを起こす可能性が出ている。アメリカ本土でも起きることを心配している」。
この外交官の発言の背景には、当然ながら、アメリカのバイデン政権がISによるテロ準備の動きを把握していたことがある。この事件が起こる直前、2回にわたってロシア政府に海外の過激派によるテロが起こる可能性を伝え、2回目ではISの可能性も伝えていたといわれる。
なぜウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ。
このため、アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている。
ロシア政府はこうしたアメリカの外交原則を承知していた。前例がすでにあったからだ。2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている。
テロ情報を信用しなかったプーチン
しかしプーチン氏は今回、ワシントンからのテロ情報を信用しなかった。テロ発生の3日前、対テロ作戦の中核である連邦保安局(FSB)での会議に出席したプーチン氏はこう警告をはねのけた。
「これは、あからさまな脅迫である。ロシア社会を脅し、不安定化を狙ったものだ」
なぜプーチン氏は今回、アメリカの警告を受け入れなかったのか。やはり、ウクライナ侵攻で間接的にロシアと対峙するバイデン政権への反発があったと思われる。実際に、事件当夜のコンサートホール周辺の状況を見ると、厳重な警戒態勢をとっていたとは言えない。
これは、明らかにプーチン政権の手落ちである。西側であれば、テロ警備上で大きなミスを犯したとして、政権への批判の大合唱が起きるところだが、ロシアではそうはならない。真の野党も、報道の自由もないからだ。
逆にプーチン政権は、この事件をウクライナや米欧への攻撃材料として利用している。プーチン氏は「過激なイスラム主義者」の犯行とする一方で、ウクライナの関与の可能性に触れた。
大統領の側近でもあるボルトニコフFSB長官に至っては、ウクライナとともに米英両国の情報機関が関与している可能性が高いとの見方も示した。
説得力に乏しいロシア側の主張
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