「親ロ心理」はあっても欧州を向くブルガリアの本音 ソ連共産圏の優等生からイノベーションハブに
東洋経済オンライン / 2024年3月30日 9時0分
ロシアによるウクライナ侵略から2年。かつて「EUとロシアの狭間」と言われたブルガリアで今、政権の枠組み作りが模索されている 。
EUの一員としての地歩を固め政治も安定軌道に乗るかどうか。「ヨーグルトの国」は今どう動いているのか、現地での個人的見解を記してみたい。
かつて共産圏の優等生だった
ブルガリアは近隣国と違い、歴史的経緯から親ロシア感情が強い。第1に、オスマントルコからの解放・独立(1878年)を助けたのは、露土戦争の勝者ロシアだった。
第2に、社会主義時代に2つの近隣国であるルーマニアと旧ユーゴスラビアが「自主路線」を歩んだのに対し、ブルガリアは共産圏の「優等生」としてソ連に近いスタンスを取り、そのためソ連からの経済支援は厚く、近隣国より生活水準や技術水準が高かった。
これらロシアからの2つの「恩義」で、国民に(とくに地方は)親ロ感情が残る。ただブルガリアが北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)に加盟して20年近い。国の舵取りは明確にEU路線へとEU側に切られ、国家運営もEUの枠に沿って動いてきている。
「社会は二重構造だ。基本はヨーロッパ志向だが、心理の底、古層には親ロがある」とブルガリアの識者は言う。もっともロシアに憧れたり子女を留学させたりはせず、留学はドイツやフランスなど欧米諸国が人気だ。
「ロシアのウクライナ侵略は、そんな便宜的な“住み分け”はもう通じない、はっきりしろとの問いをブルガリアに突きつけた。ここ2年強の国内政治の不安定も、そのきしみが原因。趨勢として古層は薄れるだろう」と前出の識者は分析する。
一方で、エネルギー面ではロシアへの依存が大きい。政治面で、国内の不満層は「ドイツ、フランスなどの西欧の大国やブリュッセルのEU官僚に操られる」ことへの不満感がある。
1989年以降の体制変革で国営企業の民営化において混乱があり、それまで親ソで発展を続けてきたブルガリアは、このときは近隣国の発展を横目で見ることになった。社会主義時代へのノスタルジーを語る庶民もいないわけではない。実は、ロシアはそこを見ている。
「ヨーロッパ的発展」を共通項に持つ保守・進歩の2会派が現政権を支えるが、以前は与野党に分かれ争ったことがあり、議席を合計しても安定多数ではない。
トルコ系政党や社会党、親ロ政党が一定の勢力を持ち、2023年6月までの2年間に内閣が5回替わった。うち2回は政党協議による多数派形成ができず、大統領が臨時内閣を指名した。
内閣を「リシャッフル」する政治
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