罹患者数でわかる「乳がん」の都道府県ランキング 3月22日公表、最新版「全国がん登録」データから
東洋経済オンライン / 2024年3月31日 7時40分
九州地方には焼酎文化があり、毎日の晩酌が当たり前という土地柄もある。そして、九州地方には大豆を含む味噌汁をあまり飲まない風習もある。
「もちろん、飲酒や食習慣に関しては個人差が大きい部分もあるが、そうした食文化も九州地方の罹患率を押し上げている可能性があるかもしれない」と松田さん。
早期発見なら5年生存率は90%以上
乳がんが早期発見された場合(ステージⅠ)の5年生存率は近年、90%以上に達している。特に薬物療法の進歩により、ステージⅡ以上の進行がんでも治療の選択肢が増えており、生存率は高まっている。
早期発見はおもに画像診断(マンモグラフィー、超音波検査など)で可能だ。国は40歳以上の女性は1〜2年に1回のマンモグラフィー検診を推奨しているが、遺伝的な要因や家族歴などのある高リスクの女性は、定められた頻度で確実に検査を受けることが望ましい。
乳がん罹患率・死亡数ともに高い青森県では、2024年度から、乳がん検診で精密検査が必要とされた人向けに、初回受診費用の補助事業を始めるという。
「経済的な理由で精検受診を見送るケースを減らし、早期発見・早期治療につなげたい」(青森県がん・生活習慣病対策課)。都道府県単位でがん精検の受診費用を助成するのは全国初の試みだ。
「乳がん予防としては、若いうちから過度な飲酒を控えること、そしてなるべく大豆食品をとること。それに加えて、適度な運動習慣をもち、40歳を過ぎたら定期的に乳がん検診を受けることも大切だと思います」(松田さん)
国立がん研究センターがん対策研究所国際政策研究部長
松田智大さん
1996年、神戸大学法学部(医事法専攻)卒業後、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、同博士課程単位取得退学、トゥールーズ第3大学医学部博士課程修了。2006年より国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報・統計部研究員、2011年より同センターがん統計研究部室長、同センターがん登録センター全国がん登録室室長などを経て、2021年より現職。専門は疫学、公衆衛生学。著書に『がんで死ぬ県、死なない県 なぜ格差が生まれるのか』(NHK出版新書)。
石川 美香子:医療ライター
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