道の駅から「おばあちゃんの味」が消える深刻事情 「いったいどうすれば」困惑する生産者たちの声
東洋経済オンライン / 2024年4月1日 11時0分
さらに、漬物の作り手の多くは高齢者だ。そのため「営業許可に必要となる設備投資をしてまでは続けられない」として、製造や販売をやめる動きが全国的に広がっている。
言わずもがな、設備を整備するとなると多額の費用がかかる。前述の野村さんも、「後継ぎもいないなかで、新しい加工場を建ててまで続けるのは無理」「これまで通り作るのがダメになるなら、やめざるを得ないかもしれない」と険しい表情を見せる。
「昔の家庭では、1年分以上の保存食として、みそ、しょうゆ、梅干し、漬物などを作って、家庭ごとの味があったけど、今はほとんど作られなくなった。だからこそ、“あの味が食べたい”と、うちの漬物を求めてくれる人も多い。零細で続けている高齢者は、多額の設備投資をするのは難しく、このままではやめざるを得ない」(野村さん)
すでに影響が出ている道の駅
全国の道の駅では、すでに影響が出始めている。
愛媛県の「いしづち山麓マルシェ」では、約30人の漬物の生産者のうち、25~26人が製造販売をやめる決断をした。
生産者の多くが農家で、余った野菜などを自宅で漬け込んで同店などに納品していた高齢者。自家製漬物は、入荷したらすぐに売り切れる人気商品だったが、大多数が「設備投資をしてまでは続けられない」とやめる決断をし、継続するのは3~4人ほどの見込みだという。
同店の統括マネージャーは、「これだけ規制を強めると製造できない。保健所にかなり抗議したが、ダメだった」と落胆する。
「個人で作る自家製漬物は、おいしくて安いと人気商品だっただけに、“なぜあの漬物が買えないのか”と、お客さんから文句が出ています。量産品にはない昔ながらの地域の味で、地元の人も愛着がある。それがなくなってしまうのは、店としても大きな痛手。何より、このままでは、地域の伝統の味が消えてしまうことに危機感を抱いています」(統括マネージャー)
JA高知県が運営する「JAファーマーズマーケットとさのさと」の担当者も、法改正によって「今後、個人で作っている人は、作り続けるのがどうしても難しくなる」とため息をつく。
同店は、農家が作ったものを委託販売する直販所。商品には生産者名も明記されるため、「あの人の漬物が好き」と名指しで買いにくる客も多い。
「昔からずっと作り続けているお年寄りのなかには、作ることが生きがいになっている人もいる。製造のハードルを上げたら、作りたくても作れない人が出てくるし、古くから続く味が消えてしまうのも寂しい」(担当者)
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