80歳女性の「生きがい」を奪う"食品衛生法の問題" 国の「漬物は食中毒のリスク」専門家はどう見る
東洋経済オンライン / 2024年4月2日 11時0分
地域の味を守ろうという機運
前出の宮尾茂雄さんは、「問題が表面化したことで、地域の味を守ろうという機運が生まれたのは明るい兆し」とも指摘する。「これを機に、若い人が文化継承のために動いてくれるなどの動きも期待したい」。
法改正が決まってからの移行期間、長年にわたって漬物を作ってきた高齢者らは、苦悩を重ねてきただろう。生きがいや楽しみとして作り続けてきた人も多いだけに、継続するかどうか悩み抜いた人も少なくないはずだ。
小規模で漬物を作る多くが野菜の栽培農家で、多くが高齢者。ただでさえ作り手が少ない中で、法改正を機に撤退を決めた人もいる。
補助金や共同加工場の整備などの支援の動きがあっても、「そこまでしては続けられない」と判断する高齢者も少なくない。前出の前橋さんは言う。
「発酵文化を含めた和食文化は、これまでも幾多の困難を乗り越えてきた。衛生管理の徹底は、時代の流れや環境の変化を踏まえても必要で、法改正は致し方ないと考える。時代に合わせて変化しながら伝統を守ろうとする努力が必要ではないか」
郷土の味と、作り手の生きがいが途絶えることのないよう、活路となるような道筋を見出せるのか。規制強化が目前に迫っている。
松岡 かすみ:フリーランス記者
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