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北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?

東洋経済オンライン / 2024年4月2日 6時30分

現在は、「マウントレースイスキー場」はかろうじて営業を再開しているものの、スキー場に隣接した「ホテルマウントレースイ」は閉鎖したままだ。スキー場は、夕張市近隣から自家用車で訪れる地元客がまばらな状況で、インバウンドの波は及んでいない。こうした状況の中でも、夕張市は2024年の観光入込客数の目標を60万人としており、目標達成に向けて観光ホームページの更新、観光案内看板整備、市内観光マップの更新作業に取り組んではいる。しかし、2022年の観光入込客数は23万6000人にとどまっており、2023年12月6日に行われた夕張市の定例市議会で厚谷司市長は「目標達成は厳しい状況であることは事実」と答弁している。

なお、市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない。

こうした状況に対し、全国各地の地域が抱える問題に精通する日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は「多くの国では鉄道に乗ること自体が観光資源として認知されていることからインバウンド来訪の波は鉄道のある地域に波及しやすい傾向がある」と指摘する。

実際に北海道のインバウンド誘致は一定の成果を見せており、この冬の観光シーズンは札幌から函館や帯広、網走方面に向かう特急列車は大混雑となっていたほか、ニセコリゾートエリアの玄関口となる函館本線の倶知安―小樽間でも日中に通常運行される2両編成のH100形では途中の余市駅で乗客の積み残しが発生する事態が生じたことなどから、急きょ3両編成のキハ201系が投入され輸送力の増強が図られた。

さらに藻谷氏は、「北海道ではせっかく存在していた鉄道が廃止されてしまったために、優れた景観を持つにもかかわらずインバウンド来訪の波が及んでいない地域もあるのは残念だ。つい最近の廃止事例である日高本線などについては、維持を北海道だけの判断に任せず、インバウンド振興という国策的な観点から対処を考えるべきだったのではないか」と続けた。

東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線に

鈴木知事就任以降、道は北海道の鉄道維持のために積極的な財政支出をしようとはせず、北海道の鉄道ネットワークの破壊を続けている。知事就任以降に廃止された鉄道路線は2020年5月の札沼線(学園都市線)北海道医療大学―新十津川間47.6km、2021年4月の日高本線鵡川―様似間116.0km、2023年4月の留萌本線石狩沼田―留萌間35.7km、2024年4月の根室本線富良野―新得間81.7kmで、その総距離は297.1kmに及ぶ。さらに、2026年3月31日限りで留萌本線深川―石狩沼田間14.4kmも廃止となる見込みで、この距離を加えると311.5kmの鉄道路線が廃止となり、この距離は東海道新幹線の東京―名古屋間に匹敵する。

鉄道だけではない。北海道新幹線の並行在来線問題では道が廃止の方針を決めた函館本線の長万部―倶知安―小樽間140.2kmについて、近年深刻化するバスドライバー不足を背景にバス転換協議が中断に追い込まれた。鈴木知事には、北海道が全体的に活気づくような筋の通った政策立案を望みたいが、その思いは届くのだろうか。

櫛田 泉:経済ジャーナリスト

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