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養老孟司×ヤマップ春山対談「こどもを野に放て」 思い通りにならない自然と折り合いをつける力

東洋経済オンライン / 2024年4月2日 17時0分

以前、岡山県の新見というところにある小学校に行って、こどもたちと遊んできたことがあります。一応口実がないといけないので、虫捕りを教えるみたいなふりをしてね。

雨が降ってしまったので、結局、虫は捕りませんでしたが、実際は単に遊びに行くだけなんです。こどもたちは、ほっとけば遊んでますから。

春山 先生は、小学校に出向いてこどもたちに虫の話をするということを、よくやっていらっしゃるんですか。

養老 機会があればね。それは別に虫の話をするのではなくて、できるだけ外で遊ばせてやろうと。言ってみれば、学校の邪魔をしているんです(笑)。

「遊び」と言うけれども、やはり人間も他の動物と同じ生きもので、本来はそういう自然環境の中で生きてきたわけですから、そこへ戻る、そこで必要なものをまず学んでくるということですね。

僕なんかへそ曲がりみたいにこどものときからずっと虫をやっていますから、虫の目で世界を見て、おかげさまでいろんなことが考えられるわけです。

春山 そういう自然体験を通して、自分のいのちが地球とつながっているということを身体で理解できれば、風土への思いや自然環境への感性が自ずと育っていくと思います。

まず身体性を磨くことが大事

養老 僕の知り合いに﨑野隆一郎さんという人がいて、夏休みになるとこどもたちを何もない森の中に連れて行って30泊31日過ごさせるというプログラムを、もう30年くらいやっています。

僕も時々、このキャンプに顔を出して、一緒に虫捕りをしていますが、参加する子たちは、まずはスマホを没収されて、山のサバイバル生活に放り込まれます。

朝は日の出とともに起きて、100段の階段を登ったところにある水場で水を汲くみ、一から火を起こして食事をつくります。うまく火を起こせなければ、自分たちが食べるものはありません。

とにかく自分で身体を動かさないと生きていけないというスパルタなキャンプで、大人が手取り足取り教えるようなこともしない。

一食ぐらい食べられなくても、大したことはないのですが、こどもたちはそうなったら大変だと、目の色を変えて、本気で取り組みます。﨑野さんは「一日やったら、こどもたちは慣れますよ」と言ってましたけどね。

このキャンプで彼らが何を学ぶかというと、一番は身体性ですね。

自然に親しむも何も、人間にとって、自分の身体は最も身近な自然です。自然というものは思うようにはならないということを、こうしたキャンプを通してあたりまえのように親しんでしまうわけですね。

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