東京都・宮坂副知事が見た「自治体DX」理想と現実 都の外郭団体で未曾有のシステム大移動を支援
東洋経済オンライン / 2024年4月3日 7時50分
自治体で情報技術者やエンジニアを採れるなら、こんな新しく面倒くさいことをやらなくてもいい。だけど、公務員の給料は急に上げられないし、働き方も公務員法のルールがあるのでそんなに変えられない。少なくとも、「e-Japan」(※ 政府が2000年に示したIT社会実現の構想)から、20年以上行政のデジタル化はうまくいかなかった。それは、採用の仕方がうまくいっていないからだ。
広域なり、区市町村のもう1個上のレイヤーでまとめて採用するような、過去にないやり方に変えないと同じことを繰り返してしまう。
――ガブテック東京で採用した人材を「シェアリング」して、人材難にある区市町村を支援する、と。
これ(エンジニアをシェアする手法)が正しいかわからないが、ガブテックは1つの知恵だ。(都庁で)採れなかった人が来てくれていて、一定の成果は出ている。自治体のシステムに詳しい人もいれば、ずっとクラウドを民間でやっていた人もいる。
移行後のコストは見積もり切れていない
――一方で、システム移行に当たっては“コスト”の問題を気にする自治体も多いです。国には、どのような課題を伝えていますか。
これは結局、(国からの)「今よりいい場所に引っ越さないか」という話で、基本業務が変わるわけではない。期日に間に合うと「補助金」が出るが、遅れる自治体が出始めているので、「遅れると補助金はどうなるの?」という問題がある。一方で引っ越し後に(システムの)ランニングコストが上がる可能性もあり、そこも見積もり切れていない。
住民から「引っ越してほしい」と頼まれたわけではないし、住民向けの事務は急に変わらないので、運用経費が今より高くなると住民にも説明しづらい。コストは長い目で見れば「3割下がる」という話があるが、今は引っ越す作業だけで精一杯なので、そこまではいけないのではないか。
広域自治体としては、「期日を過ぎても資金的サポートを」といった話を、区市町村と国の間に入るかたちで要望していきたい。国には62区市町村の意見をまとめて伝えているが、非常に真摯に柔軟に聞いてくれている。
――今回のプロジェクトは、一般市民からはわかりづらい基幹系システムの話でもあります。
世間一般では、自分の自治体でしか住民サービスを受けないから、日本中が1個のシステムで同じような仕事をしていると思われやすいし、僕も民間にいたときはそうだった。でも、それぞれの自治体は、長い歴史の中でシステムをカスタマイズして、きめ細かいサービスを提供している。同じ地方自治の事務といえども、違う点はかなり多い。
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