無印良品「欧州で破産」報道から見る変化の現実 欧州より東アジア、国内も都会では「飽き」?
東洋経済オンライン / 2024年4月3日 11時30分
『ストーリーとしての競争戦略』の著者・楠木健が指摘するように、優れた経営戦略は、それを一つの「ストーリー」として提示することができる。
無印良品は1980年、西友のプライベートブランドとしてスタートし、西武グループの総帥だった堤清二の思想が深く刻みこまれたブランドだった。その思想とは、「ノーブランドというブランド」というもの。当時のハイブランド隆盛の時代に真っ向から対立する、非常にコンセプチュアルな理念だ。
そして、その理念は、商品デザイナーに起用された杉本貴志や小池一子、原研哉といったデザイナーたちの商品デザインも含めて、同社のさまざまな戦略の際を打ち出すときのストーリーの核となってきた。例えば、そのストーリーの一環として、ハイブランドではなく、その土地に根付いた、土着的なものを重視する、という商品開発における姿勢も生まれている。
また、良品計画のこの姿勢は、「リージョナルランドマークストア」を増やしているスタバに通じる。リージョナルとは「広い地域」を指す言葉で、スタバの公式サイトでは「日本の各地域の象徴となる場所に建築デザインされ、地域の文化を世界に発信する店舗の総称です」と語られている。神戸北野異人館店や太宰府天満宮表参道店が代表例だ。
このように考えると、無印良品の地方出店は、ある種、「土地に根付いたものを重視する」という、それまでのストーリーを自然に発展させた形でありながら、昨今のチェーンストアのブランディングではトレンドに沿ったものでもあると言えるのかもしれない。
無印良品はどうなっていくのか
無印良品がここ数年、拡大の中である種の”ひずみ”を生じさせてきていたのは確かである。その中で、これまでの販路にはなかった、主軸とは言えなかった「地方出店」が選択肢として登場してきた。
これらは、表面的に見ると無印良品の方向転換にも思えるが、実は、ストーリーとして捉えたときの一貫性はあり、十分に分があるともいえる。
かつては日本における小売りの優等生ともいわれていた「無印良品」だが、さまざまな変化を遂げながら、現在でも迷いながら経営を続けている。その進路がどのようになるのか、今後の動きに注目したい。
谷頭 和希:チェーンストア研究家・ライター
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