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業界の異端児2社が「組織の結婚式」を行ったワケ 従業員が握る「株式0.1%」が経営に与える影響

東洋経済オンライン / 2024年4月7日 11時20分

「僕自身が関わり続けられないことを考えると、資本構成を変えておく必要がある。最初は高野君と『コミュニティで株式を保有できないか』と考えたが、全部まとめて皆に分割するのは難しいのがわかった。そこに信頼できるパートナーであるカヤックが現れ、残るメンバーとともに決めた。まさに『仲間と作る現実は自分の理想を超えていく』ですね」(原田代表)

一方、カヤックの柳澤CEOは買収について「数年前から原田さんが後継者問題について話していたので、『様々な選択肢やアイデアを検討しよう』となりました」と語る。

カヤックは社員の自主性を大切にしており「多様な業種の会社をグループに入れたらどんな面白い化学反応を起こすかということを常に考えている。出版社と組むという検討も、過去何度かしていた」(柳澤CEO)。

今回のディールについて筆者は当初、「黄金株はカヤックにとって今後の経営の足かせになるのではないか」と思った。しかし英治出版側から黄金株の話が出てきたとき「いいことだと直感的に思った」と柳澤CEOは言い切る。

「英治出版は面白い経営をされているというのが最初の印象だったが、組織文化にすごくこだわっているのを知り、組織としても近いと思っていた。英治出版が大切にしているものを守るために株を残すのは、象徴的な意味もあるし、仕組みとしても面白い」(柳澤CEO)

仲介役となったゼブラ アンド カンパニーの田淵代表は「もともとは原田さんが自身と既存株主の株式を長期的にどうしていくかという話から始まった」と振り返る。

「英治出版にはファン的な個人株主が多く、従業員や著者などステークホルダーにとっては英治出版というコミュニティにいること自体がある種の権利だった。黄金株のスキーム自体は海外でも事例があったので、どう今回のディールにカスタマイズしていくかを考えました」(田淵代表)

黄金株の権利は限定されている

とはいえ、原動力だからと従業員が何でもできるようにしたわけではない。「黄金株が拒否できる権利はすごく限定されている」と田淵代表は説明する。

「英治出版の定款の一部を書き換えることに対しての拒否権を、従業員で構成される『英治出版をつなぐ会』が持っている(英治出版の経営者は持たない)。今回、英治出版の従業員が定款にパーパスを書き込み、少なくとも従業員の同意がないと変えられない形にした。もちろん定款の他の部分はカヤックが変更できる権利を持っている」

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