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産地にいったい何が?「チョコレート危機」の実態 カカオ豆価格は1年で3倍、現地からも不安の声

東洋経済オンライン / 2024年4月7日 11時40分

しかし、そうなると、私たち消費者は心配になってしまう。もはやいつものチョコは、いつものように買えないチョコになってしまうのだろうか?

明治 グローバルカカオ事業本部の宇都宮洋之さんに尋ねると、「カカオ豆の価格が不安定なので、商品価格はまだはっきりしません。カカオ豆の需要と供給バランスが崩れ、供給が足りない状況なので、カカオ豆を大事に活用する必要が出て来ています」と回答。

その上で「高カカオチョコレートはカカオ豆を使う量が多く、影響は大きくなりそうです。ただし、今この状況に対応するため、世界中でキャラメルやナッツ、フルーツ、クッキーなどを活用し、商品の設計を見直す動きが出ています。おいしさと満足感をどう提供できるか、メーカーの力が試されることになりそうです」と話す。

ガーナでは後継者不足の問題も

ところで、チョコレートの主原料、カカオをよく知る人は、どれくらいいるだろう。カカオは、バナナと同じようなトロピカルフルーツだ。野菜と同じ農作物なので、もちろん天候に左右される。

筆者は昨年末、取材でガーナの農家を訪れ、農家の人々の話を聞いた。「土地が痩せたのか、気候変動のせいかわからない。カカオがあまり実をつけなくなってしまった」「干ばつでカカオが枯れてしまったんです」。そういって肩を落とす農家の人々の表情が、忘れられない。収入が不安定なので「カカオ農家を子どもには継がせたくない」いう声も多かった。後継者が不足しつつある。

フランスの製菓用高級チョコレートブランド、ヴァローナ社も2024年春から商品を値上げする。「チョコレート全体の値段はやはり高くなると思います。ただ市場に出ている今までのチョコレートやカカオ豆の価格が低すぎたのではないでしょうか」と話すのは、ヴァローナ ジャポンのアントナ・ナジブ社長だ。

「この危機を通じて、チョコレートの世界をより良くより持続可能なものにするために、チョコレート業界全体がそれぞれの立場で、果たすべき義務や役割を考える機会になるのでは」

すでに、世界中の多くのチョコレート関連企業が、産地や生産者に対して、市場価格以上の上乗せ料金を支払っている。それでもなお、生産者が十分に食べて行けない産地がある。カカオ農家の仕事は、栽培、収穫、発酵、乾燥とプロセスが多く、重労働をともなう。

「洪水などで農園がダメになって、もう一度木を植えるとしても、カカオは実をつけるまでに5年、土地の整備も入れて6年はかかります」(生田さん)

カカオ豆高騰は「産地の問題」に目を向けるきっかけに

カカオ豆の高価格が続けば、消費者の私たちは悩ましい。しかし一方で、生産者にはメリットがある。収入が増えれば、貧困から抜け出せる。労働に見合う収入になれば、後継者も増えるだろう。

「今回のカカオ豆の高騰は、日本の消費者が最終製品であるチョコレートだけではなく、産地が抱える問題などにも目を向ける1つのきっかけになるかもしれないと捉えています」(ネスレ日本 平松拓也さん)

チョコの値上がりにつながる歴史的なカカオの価格高騰は、世界中の人がチョコレートを、新たな視点で見つめ直すきっかけになるかもしれない。

市川 歩美:チョコレートジャーナリスト/ジャーナリスト

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