「団地再生」の成功事例を深掘りして見えたこと 子育て世帯の「入居続々」大阪・茶山台団地
東洋経済オンライン / 2024年4月8日 11時0分
つまり、何も手を打たなければ、さらなる高齢化、入居率の低下、それらによる過疎化、利便性の低下は必至な状況だったのだ。
そのため、運営者である大阪府住宅供給公社が2015年から再生の取り組みを本格化し、今では入居者が93%まで回復している。
入居率回復の呼び水となったのが、若い世代を呼び込むための仕掛けだ。
たとえば、隣接する2つの住戸を1戸につなげ、広々と住めるリノベーション物件「ニコイチ」や、入居者がDIY(Do It Yourself)で自分好みに模様替えできる物件「つくろう家(や)」などを用意した。
このうち「つくろう家」は一般的な賃貸住宅なら退去する際に求められる原状回復を不要としているのが特徴だ。「つくろう家」の利用者の半数以上がDIYができることを入居の決め手にしたというアンケート結果もある。
このように、ターゲットとする若い世代にニーズを合わせた住戸の導入、いわゆる「ハコ」の改善効果が非常に効果的だったのだろう。
大きな役割果たす“伴走者”
しかし、DIY住戸の導入やそれを可能にする制度の見直しだけで、若い世代を呼び込めるわけではない。それを可能にするには、さらなる仕掛けと、地道に下支えする人の存在が大きな役割を果たす。
たとえばDIYができる住戸があっても、多くの入居者がDIYに慣れているわけではない。それを満足のいくレベルで行えるよう、手助けや助言をし続けてくれる伴走者のような人たちがいるからうまく回るのである。
茶山台団地には空き住戸を利用した「DIYの家」と呼ばれる工房がある。
ここには地元でDIYショップを営む専門家などがいて、道具の貸し出しや壁紙などの素材の販売、見栄え良いDIYを可能にするためのアドバイスも実施している。
入居者はもちろん、それ以外の地域の人たちが電動工具や作業台を自由に、しかも無料で使えるため大好評。子どもたちの工作の悩みにも応えている。
このため、DIYの主要ターゲットである若年夫婦だけでなく、幅広い世代の人たちが集まる場となっている。
多世代交流の場はほかにもある。
「茶山台としょかん」は、従来ほとんど利用されていなかった集会所を、本を持ち寄って小さな図書館として利用しているものだ。高齢入居者向けにスマホ相談会などが開かれることもあり、今では利用者が多いにぎやかな場所に生まれ変わっている。
また、近隣にスーパーがないといった事情を受け、空き住戸を活用した食堂「やまわけキッチン」があるのも大きな特徴の1つだ。軽食やお茶を楽しめるため、月に約250人が利用しているという。
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