日本人が知らない南シナ海の「いまそこにある危機」 日米比首脳会談で試される同盟への覚悟
東洋経済オンライン / 2024年4月8日 16時0分
アメリカは日本に対し、台湾問題はもちろん南シナ海への関与も強めさせ、「応分の負担」を求めたい立場だ。
嫌米親中のドゥテルテ前大統領から政権を引き継いだマルコス大統領は、就任前の大方の予想を覆して、親米路線に舵を切った。これに憤懣やるかたない中国がフィリピンへの締め付けを強めているのに対して、マルコス政権はアメリカだけではなく、中国を警戒する国々との連携を深め、反中世論のネットワークづくりを試みている。
マルコス大統領は2024年3月、オーストラリア、欧州を歴訪、貿易・投資を呼びかけるとともに南シナ海問題でも積極的に発信し、国際法順守を訴えた。ドイツでは防衛協力拡大に合意した。
さらにフィリピンを訪問したインドのジャイシャンカル外相と会談し、海上安保協力の強化で一致した。同外相は、南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を「国際法違反」と否定したオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の裁定を支持すると発言した。
フィリピン政府はアユンギン礁に補給船を送る際に内外のジャーナリストを同乗させたり、ドローンで撮影した映像を公開したりして中国側の「いじめ」を可視化させ、世界の世論に自らの立場と中国の不法を訴えてきた。
3月23日の衝突では日米だけではなく、英仏独や欧州連合、豪州、ニュージーランド、カナダなどが一斉に中国批判の声を上げたのはその成果ともいえる。
中国の攻勢が増す局面で、3国関係を強化する今回の首脳会談は、安全保障環境の多角化を図るフィリピンにとっては渡りに船である。
議論なき日本はどうするか
それでは日本にとって「3国(準)同盟」の意味はなにか。岸田政権は前のめりだが、一般の国民はもとより、ジャーナリズムや論壇でもさほど関心が高まっているようにはみえない。
論評や報道は主に安全保障専門の学者やコメンテーター、防衛省、外務省の担当者らによってなされている。いわばそれで飯を食っている人たちによる発信である。ほとんどが日本政府と同じく、フィリピンへの防衛協力や連携強化を当然とする前提に立っているようにみえる。
マルコス政権は米比の防衛協力強化協定(EDCA)に基づき、アメリカ軍が使用できるフィリピンの基地を以前の5カ所から9カ所に増やした。
その4カ所のうち南シナ海の最前線にある西部パラワン州の1カ所を除く3カ所はルソン島北部に位置する。同島北端から台湾最南端の距離は沖縄・那覇からの距離の半分以下だ。台湾有事を念頭に置いた選定である。
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