原油価格は中東情勢が沈静化しても下落しにくい 再び1バレル=100ドル突破の可能性はあるのか
東洋経済オンライン / 2024年4月9日 10時0分
原油相場がここへきて騰勢を強めつつある。アメリカの指標であるWTI原油先物価格は、4月5日に1バレル=86ドル91セントで取引を終了。一時は昨年10月以来の87ドル63セントと、約5カ月ぶりの高値をつけた。
中東情勢の懸念が払拭されない限り下値は堅そう
もちろん上昇の要因となっているのは、中東情勢の緊迫化だ。昨年10月のイスラム組織のハマスによるイスラエルへの攻撃からほぼ半年が経過したが、昨年11月以降はイエメンのイスラム武装勢力であるフーシ派が紅海での商船攻撃を開始。それ以来戦闘がイスラエル領外に拡大、市場の不安が高まっていることは否めない。
すでに今年3月も同海域での攻撃で初の死者が出たことで警戒感が高まっていたが、4月に入ってイスラエルがシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺を空爆したことで、事態は悪化。イランのイブラヒム・ライシ大統領が報復の措置をとることを明言するなど、予断を許さない状況だ。
もちろん、市場がもっとも恐れているのは、対立がエスカレートし、最終的にイランが何らかの軍事行動に打って出るというシナリオだ。もしペルシャ湾の入口にあるホルムズ海峡の閉鎖に踏み切ることがあれば、原油先物相場は1バレル=100ドルを軽く超えて、大きく値を伸ばすのは必至だ。
もし原油先物取引をしている人であれば、イランの軍事行動の可能性が残っている間は、安易に売りを仕掛けることはできないというのが実情だろう。今のところ、イランはまだ抑制的な態度を維持している。
だが、今後、国民の間に反米や反イスラエル感情が高まり、強気の行動を取らない政府への不満が募るようなことがあれば、何らかの行動を起こす必要に迫られる可能性は消えない。中東問題が早期に解決に向かうことが考えにくい今の状況下では、今後大きな衝突が起きなくとも、相場の高止まりが続くと見ておいたほうがよい。
一方、地政学リスクだけでなく、需給面でも将来的に引き締まってくるとの見方も、原油先物相場を一段と堅調なものにしている。3月初め、OPEC(石油輸出国機構)と他の有力産油国で構成されるOPECプラスは、年初から行っている自主的な追加減産を、6月末まで継続することで合意した。
OPECの生産量は1月に減少した後、2月にはいったん増加していた。これは主に減産の履行を免除されているリビアやナイジェリアなどの生産が増えたことによるものだった。
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