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SNSが災害時の情報インフラとして使えない理由 偽情報すら収益化する姿勢で被災地の活動に悪影響

東洋経済オンライン / 2024年4月11日 19時30分

共同通信の取材では(*2)、偽の救助要請に基づき消防が出動したケースが少なくとも2件あったことが明らかになっている。消防の担当者は、不確実性の高い投稿でも本当かもしれず無視できないと取材に回答している。ソーシャルメディアに投稿された救助要請を見た人による110番通報で警察の対応が割かれるという問題も起きている。

*2 『京都新聞』2024.2.9朝刊など

インプ稼ぎや偽・誤情報対策の不十分さは、2022年に起業家のイーロン・マスクがツイッターを買収したことによる。イーロン・マスクは、Xと名称を変更しただけでなく、偽・誤情報対策チームをリストラし、収益化を強化するなど運営方針や機能変更を矢継ぎ早に行っている。

その結果、自治体との連携も不透明になっている。自治体の運営するアカウントが突然凍結されるようになった。読売新聞によると、沖縄県では県の防災サイトに投稿を転載していたが、最新の投稿ではなく反響が多い過去の投稿が表示されるようになり、地震や津波が新たに発生したと誤解される可能性があるため転載を中止している(*3)。このような凍結の理由や解除の方法、アルゴリズムの変更が説明されることはない。

*3 https://www.yomiuri.co.jp/national/20231004-OYT1T50142/

収益を得るための不確実な投稿が溢れるにもかかわらず、消防、警察、自治体は対応せざるを得ない。情報インフラという社会的な位置づけがむしろ課題になっている状況がある。ソーシャルメディアは機能不全であり、被災地の活動に悪影響を及ぼしているという現実を受け止め、報じ方を変えていく必要がある。

従来対策と取材の限界

偽・誤情報対策のための議論は、プラットフォームの対策と利用者のリテラシー向上が2本柱となっている。これは冒頭のメディアからの問い合わせにリンクしている。

対策は表現の自由への配慮があり自主規制が基本となるが、そもそもプラットフォームを運営する企業のほとんどが外資系であり実効性は乏しい。偽・誤情報対策を放棄し、陰謀論に同調することもあるエキセントリックな起業家であるイーロン・マスクが話を聞くなら苦労はない。イーロン・マスクの動きを横目にフェイスブックやGoogleの対策も後退している。

リテラシーはどうか。災害の混乱に乗じてお金を儲ける行為は問題だが、法的に規制されているわけでもなく、運営企業からペナルティを課せられるわけでもなく、外国からの投稿者にモラルの問題と言ったところで通じる可能性が低い。現実問題としてインプ稼ぎを減らす方法はない。家族や知人を心配したり、善意で情報を提供したりする人たちも投稿が増える要因だが、その人たちをリテラシー不足として批判するのも酷だ。

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