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市場歪める「ガソリン補助金」、過剰支給の疑いも 識者は「1兆円の便乗値上げ」と試算、見えぬ出口

東洋経済オンライン / 2024年4月11日 7時40分

原油コストだけでなく、レギュラーガソリン全国平均価格を補助金支給額の算定式に加味したことで、"歪み"に拍車をかけた。

単純比較して見てみよう。原油コストは制度導入直前(2021年11月29日)の57.8円から、2024年4月3日時点で80.5円まで上昇した一方、レギュラーガソリン全国平均価格は同期間で168円から174.6円と大きく変化していない。

補助金は全額卸売価格に反映され、確かに原油価格高騰分を抑制している。だが、全国平均価格から補助金反映後の原油コスト(円換算、直近は23.3円)を差し引いた差額は15.2円から23.5円に拡大している。この差額には輸送コストの高騰分は含まれず、マージン拡大が主因となる。

便乗値上げでマージンが拡大?

石油業界に詳しい公認会計士の中澤省一郎氏は、「いまの制度では補助金が過剰に支給される一方、石油元売りや輸入業者などの便乗値上げでマージンが拡大している」と指摘する。

毎週月曜日の調査価格に基づく補助金が実際に小売価格に反映されるのは、各ガソリンスタンド(SS)の在庫がはけてからのことになる。「まだ補助金が反映しきらない価格を基に補助金が算定されることになる」(中澤氏)のだ。

これに対して資源エネルギー庁燃料流通政策室は、「われわれはSSのモニタリング調査をして、おかしな値付けをしていれば立ち入り検査もして卸売価格にあわせた値付けを促している」と説明する。

より問題なのは、「原油コストは0.1円単位で変動する一方、元売りの基準卸売価格は0.5円単位で計算されることだ」(中澤氏)という。このため原油コストの上昇局面では、卸売価格はより急カーブで上昇する可能性がある。

制度開始から2年4カ月間、各価格の推移を追跡してきた中澤氏によれば、全期間平均で毎週0.055円のプラスの誤差が発生している。これをもとに中澤氏が試算したところ、「卸売マージンが拡大しており、便乗値上げ分の実額は(累計で)約1兆円に達している」という。

ただ、資源エネルギー庁はこの問題について、「市場メカニズムの中の動きで調整されること」として意に介さない。

補助金の出口を早急に国民に周知するべき

前出の野村総研の木内氏は、「税金をあまねく集めて生活に余裕がある人まで広く補助する政策は効率が悪い。一定の所得水準以下の人に絞った物価対策などに衣替えすべきだ」と話す。そのうえで、補助金の出口への道筋を早急に国民に周知するべきだと指摘する。

「補助金で無理やりガソリン価格の水準を変えるのはおかしいことで、むしろ国民に慣れてもらわなければならない。去年も国民への出口の周知に失敗し、延長せざるをえなくなった。同じ轍を踏んではならない」(木内氏)

一方、資源エネルギー庁の日置純子・燃料流通政策室長は、「補助金はいつまでも続けるものではないが、安くしてほしいという強い声に日々直面している。今の状況で、いきなり補助金をやめられるのか」と話す。

出口戦略はまだ、見通せそうにない。

森 創一郎:東洋経済 記者

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