台湾地震、「鉄道のスピード復旧」なぜできたのか AIで落石検知、「双単線」方式活用し暫定運行
東洋経済オンライン / 2024年4月12日 6時30分
しかし、地震発生の翌々日、5日金曜日に帰省する旅客は鉄道の増発だけではカバーできず、さまざまな交通機関が手を取り合っての総力戦となった。国内線の空の便も増発したほか、北部と東部を結ぶ山岳を貫く高速道路が整備されている区間では高速バスを増発し、道路が不通の区間では鉄道に乗り換えるといった、複数の交通機関を組み合わせた利用を促すなど機敏な対応が行われた。
特筆すべきは自動車での移動需要も考慮し、地震翌日の4日から道路が不通となっている区間を通常は運用のない船を利用し結んだことだ。初日は蘇澳港から花蓮港の間で、乗用車を往復176台輸送、旅客は鉄道を使い移動した。
さらに5日からは「新臺馬輪」と呼ばれるフェリーも追加で投入し、輸送力を増強。こちらは普段、台湾本島と馬祖島を結ぶ航路に使われている旅客船であるため、客席も開放した。この措置は連休明けの8日まで続いた。陸路のアクセスが制限される中で、異なる交通機関の組み合わせや、海運を即座に手配し対応することで輸送力を確保、効率を最大化する見事な連携プレーとなったといえよう。
一方、台北都市圏では中心部の影響はなかったものの、2021年に部分開業した台北の外郭を結ぶ環状線の橋桁がずれ、被害を受けた。地震当日より代替のシャトルバスが運賃無料で運行されたが、運行区間が2つに分断される形となった。
そのうち、板橋―新北産業園区間は地震当日の17時にいち早く復旧された。しかし、この区間は部分開業時の暫定的な終端駅となっている新北産業園区を除き、列車の運行方向を変えることのできる折り返し設備がない。ここで活用されたのが双単線(そうたんせん)と呼ばれる線路構造だ。
「双単線」活用しスムーズに復旧
台湾の鉄道網は一見、それぞれ反対方向の列車が運行する複線のようでも、実際には単線を2つに並べた双単線と呼ばれる方式が採用されている。運行間隔の過密な日本では見る機会が少ない構造であるが、台湾の在来線では渡り線を活用した追い越しに使われ、ダイヤが乱れた際には同方向の列車の追い抜きもできる。事故発生時や線路障害時に復旧を早めることができるといったメリットがあり、ヨーロッパの鉄道で多く採用されている。日本製の車両が採用されている台湾高速鉄道(新幹線)も、線路はそれに倣って同じ仕様だ。
今回、板橋―新北産業園区間では、復旧当初は1本の線路のみを利用したシャトル輸送が行われたが、それでは運行間隔が普段の倍となってしまう。そこで5日からは輸送力増強のため、2本の線路にそれぞれ1つの列車を別方向に走らせ、終点に到着後は回送列車として折り返すという運行形態を採用。通常のホーム上での行き先案内に沿った形で、混乱の起きないスムーズな暫定運行が実現した。
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