ヨーカ堂が上場検討、拭えぬ「パフォーマンス感」 リストラ先行、営業力強化の道筋が見えない
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 7時0分
「IPO(新規株式公開)なんて非現実的。リストラが続くヨーカ堂社員に向けた一種のパフォーマンスだろう」。セブン&アイ・ホールディングスの関係者はそうこぼす。
【写真】会見後、記者団に囲まれる井阪隆一セブン&アイ・ホールディングス社長
4月10日に開かれた2024年2月期(2023年度)の決算会見。セブン&アイは傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂を含むスーパーストア事業のIPOに向けた検討を始めたと発表した。昨年にグループの食品スーパー、ヨークと合併したイトーヨーカ堂のほか、首都圏に高級スーパーを展開するシェルガーデン、東北地盤のヨークベニマルなど、スーパーストア事業各社をぶら下げる中間持ち株会社を設立し、「最短で2027年の上場を目指す」(井阪隆一社長)という。
「分離ではない」が連結除外を想定
スーパーストア事業を巡っては、昨年までアクティビスト(物言う株主)であるアメリカの投資ファンド、バリューアクト・キャピタルがグループからの分離を求めるなど、外部からの改革圧力が強まっていた。セブン&アイは従来、「ヨーカ堂が持つ食の品ぞろえや商品開発の知見が、中核であるコンビニ事業の優位性につながっている」とグループからの分離を否定していた。
10日の会見でも、井阪社長は「将来的なグループからの分離は考えていない」と強調した。その一方、IPO後にセブン&アイが持つスーパーストア事業会社の株式の割合については、「(食分野での協議継続には)15%未満ではだめ」と言いつつ、「連結にはこだわらない」とも話した。
実は井阪社長は、これまでもヨーカ堂上場の可能性を示唆していた。今回の発表に意義があるとすれば、実際に取締役会での検討に入ったことや、2027年という時間軸が示されたこと、そしてヨーカ堂がセブン&アイの連結から外れうると公言したことだろう。
セブン&アイは同時に、国内と海外のコンビニ事業のマネジメント体制統合など、今後の組織改革の方向性も発表した。セブン&アイは資本効率の低さを指摘されており、中核事業への経営資源集中という方向は、同社の成長戦略としては評価できる。
他方で、IPOによって自立経営を目指すのがヨーカ堂の成長戦略というのは、あまりに前提を欠いた議論だろう。ヨーカ堂の現状を冷静に見れば、IPOの検討の段階にあるとは到底言えないからだ。
セブン&アイは首都圏スーパーストア事業のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)を2025年度に2022年度比3倍の550億円にする「公約」を掲げている。「現時点では550億円に向けて、3分の2の達成を確実視している」(丸山好道セブン&アイ最高財務責任者)。しかしその内容は人員削減やIT投資による効率化に伴う経費削減策が中心。公約達成には営業力強化による売上・利益増も求められるが、その道筋は見えてこない。
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