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名経営者が「利益に直結しない」話をしたがる事情 起業界隈にあふれるポジショントークを疑え

東洋経済オンライン / 2024年4月16日 17時0分

イエローハットの創業者の鍵山秀三郎さんは、社内のトイレを自身で洗うことで有名で、きっかけや効果などをメディアで語っています。事実、同社の躍進を支える重要な要素であるのは疑いようがありません。

ところが、起業志望者がそれに感化されて同じ行動をしてしまったら、遅かれ早かれつぶれていくでしょう。いくらトイレを掃除しても、売り上げは上がりません。

イエローハットと、起業したばかりの小さい会社では立っているステージがまったく違うので、取るべき行動が異なるのは当然です。

ビジョンや経営理念は稼いで(しっかりと地に足を付けて)からの話で、最初はドライに徹して稼ぐ。そこが見えていないと、泥沼にはまってしまいます。

経営者の多くがビジョンやミッション、バリュー、想いなどの(売上に直結しない)抽象的なメッセージを語るのはなぜでしょうか。

その理由はシンプルです。

成功した経営者は綺麗事を語るのが仕事なのです。会社が大きくなればなるほど、従業員や利害関係者に伝わりやすい、わかりやすいメッセージが必要となります。そのため「ありがとうが大事」と言ったりするのです。

少し話がそれますが、経営者は古典も好きです。世間で名を馳せるリーダーたちは、『菜根譚』『孫子』『論語』といった古典をよく読みます。特に『孫子』はビル・ゲイツやイーロン・マスクの愛読書として有名です。

昔から人間の本質は変わらないことや、戦争の戦略はビジネスと似通ったところがあるので、好まれるのでしょう。

名経営者が「影響を受けた」と言って紹介したりするので、当然「読んでおこう」という気持ちになるのはよく理解できます。だからといって、時間を割いてわざわざ読む必要はありません。古典を読んでも売上に直結しないので、時間と努力のムダに終わります。

「戦わずに勝つべき」という孫子の兵法はもっともだとしても、真に受けて「どうやったら戦わずに勝てるだろうか?」と考えこんでしまってはいつまでたっても売り上げは上がりません。

ビジョンを「メシの種」にする人

話を戻しましょう。

経営者とは異なる理由からビジョンを語る人たちもいます。経営コンサルタントです。

ひと口に経営コンサルタントといっても、専門はさまざまですが、なかでもビジョンを語るのは参入障壁が低く、マーケットが広いのでビジネスとして成り立ちやすい。彼らはビジョンでメシが食えるので、ビジョンの重要性を語るのです。

経営コンサルタントの存在も「ビジョン重視」の状況に拍車をかけているといえます。コンサルはビジョンを語るとお金になりますし、それを聞く起業志望者は、資金計画は不要で、こむずかしいマーケティングを考えず、精神的にキツい営業もせず、ビジョンをしっかり決めたら成功すると思い込むことができます。

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