"普通の"元会社員ほど定年後「仕事がない」切実 シニアがいきいき働き続けられる場はどこに?
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 7時20分
平日の朝9時台。PCを片手に筆者がコーヒーチェーンに向かうと、決まって同じ男性を見かける。60代ぐらいの定年後とおぼしき紳士で恰幅良く、肌つやもいい。
【画像で見る】仕事のマッチングが難しくなっているのは普通の元会社員や公務員
昼近くまで新聞や単行本に目を通したり、外の景色を眺めたりしているが、手持ち無沙汰のように見えなくもない。
この男性のような若々しいシニアは、地域の図書館でも多く見かける。
そのたびに勝手ながら思ってしまうのだ。現役を引退するには早すぎるのではないかと――。
*本記事の後編『定年後の再就職「成功する人・しない人」の決定差』はこちら
定年後も働きたいシニアが増加
「高年齢者雇用安定法の改正」(2021年4月)により、事業主に対し、「70歳までの就業確保措置(努力義務)」が施行された。
法改正初年度の厚生労働省の調査によれば、実施している企業の割合は、25.6%。4社に1社が実施している状況だ。
一見、多いように思えるが、実施企業の大半はあくまで「雇用継続支援」という形をとっている。70歳まで働けるといっても、適用要件を満たした一部の社員しか会社に残れないのが実情だ。
厚労省の調査によれば、企業の約9割は、定年を「65歳以下」に設定している。つまり、大多数の人は「65歳」までにリタイアするか、その後も働き続けたい場合は、自らの力で新たなキャリアを切り開かなくてはならない。
「もう十分働いたのだから、定年後はすっぱり引退して悠々自適に暮らしたい」――。
そうした声も聞こえてきそうだが、実際、職探しをしている65歳以上のシニアは急増している。ハローワークで仕事を探す有効求職者は25万人に及び、10年間で2.2倍に増えたというデータもある(2023年、厚労省調べ)。
昨今の物価上昇により、「年金だけでは老後が不安」というのも主な動機と考えられるが、いずれにしても定年後も働き続けたいと願うシニアが増えていることは間違いない。
高齢者の労働市場で起きている“ある問題”
その一方で、ある問題が高齢者の労働市場で起きている。それは、多くのシニアが望む仕事と、現状ある高齢者向けの求人との“マッチングが進まない”という問題だ。
ニッセイ基礎研究所・ジェロントロジー推進室上席研究員の前田展弘さんは、この問題を「セカンドライフの空洞化問題」として、10年以上前から言及してきた。
前田さんは「キャリアという切り口で高齢者を捉えたとき、大まかに3つの層に分類できる」と解説する。
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