「低迷WOWOW」と「最高益スカパー」分かれた明暗 苦境の有料放送で契約件数はともに続落だが…
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 8時0分
会社全体の業績も売上高755億円(前期比2.1%減)、営業利益9億円(同72.1%減)の減収減益に沈む見通しで、会社関係者は「投資家に向けて、簡単に『契約件数は底打ちする』と言いづらい環境になっている」と漏らす。
スカパー社長「会員数は決して増えない」
同じくスカパー!も、2023年度の契約件数は4.6%減に落ち込んだ。だが、番組制作費を積み増すなどして反転攻勢にもがくWOWOWに対し、スカパー!の受け止め方は若干異なっている。
「今後の会員数は減る一方で決して増えたりはしない。見栄を張っても仕方がない」
そう話すのは、スカパーJSATホールディングスの米倉英一社長だ。米倉社長は「『(スカパー!を運営する)メディア事業が会社の成長ドライバーになる』だとか、『100億の利益を目指す』などとは口が裂けても言うつもりはない。できるわけがない」と断言する。
一見、白旗をあげたようにも映る発言だが、米倉社長が「われわれはそもそも放送会社ではない」と話す通り、これにはスカパーJSAT固有の事業構造が大きく関係している。
スカパーJSATは2007年、衛星放送のスカイパーフェクト・コミュニケーションズと、衛星の保守・運営を行うJSATが経営統合して誕生した。2008年には、JSATの競合であった宇宙通信を買収し、3社が合併している。
2022年度の通期実績を見ると、売上高1211億円のうち、宇宙事業が占める割合は47%だが、営業利益223億円に占める割合では83%にまで達している。有料放送であるスカパー!の知名度の高さからメディア事業に注目が行きがちだが、その実態は宇宙事業の会社なのだ。
足元では、船舶や航空機などで使用されるWi-Fiの提供などのほか、世界的な安全保障需要の高まりを受けた官公庁向けのサービスで業績を伸ばしている。宇宙事業の拡大により、2023年度は過去最高益を更新する見込みで、株価も今年3月に過去最高値を記録した。低迷するWOWOWとは、まさに対照的な状況といえる。
業界からはスカパーへ不満の声も
宇宙事業の収益のうち、衛星放送向けの回線提供が23%にまで低下する中、株主からは「衛星放送はやめたらどうか」という声も上がるほどだという。ただ、米倉社長はあくまで「衛星放送がなくなることはない」との認識を示す。
「会員数が100万人に減っても、メディア事業で利益を出せる構造にしていく」。米倉社長はそう強調し、現在は採算が取れている目玉のプロ野球全試合中継についても、赤字になったときには撤退も辞さない意向であると明かした。
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