男性との収入格差が縮まらない女性の不当な現実 改善しているように見えても実態は違った
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 16時0分
近年、男性と女性の間の個人年収の格差は縮小傾向にある。その原因の多くは、依然として大きいとはいえ賃金の格差が縮小してきたことに加え、職業をもつ女性の比率が上昇し、収入がまったくない女性が減少したことにある。
以前に比べて、女性が家の外で仕事をもって働くのが容易になったのは事実だろう。しかしこのことは必ずしも、結婚・出産を経てもなお就業を継続する女性が増えたということを意味するわけではない。しばしば誤解されるのだが、就業を継続する女性はまだまだ少ないのである。
下の図表のようなグラフをみたことのある人も多いだろう。横軸に年齢、縦軸に女性の労働力率をとったグラフで、一般にはM字型カーブと呼ばれることが多い。
まず1982年のグラフを確認しよう。労働力率は、多くの人が学校を卒業する20歳代前半には7割程度に達するが、その後は急落して30歳代前半には49.5%となる。その後、子育てが一段落して再就職する女性たちが一定数いるため、労働力率は40歳代で60%台半ばまで回復するが、50歳以降になると緩やかに低下していく。グラフの形がアルファベットのMに似ているので、これをM字型カーブというのである。
ところが2022年のグラフをみると、労働力率は20歳代後半に87.7%とピークを迎えたあと低下し始めるものの、底に達する30歳代後半でも78.9%と8割近くをキープしている。カーブの真ん中の谷間がずいぶん浅くなり、ピークとの差はわずか8.8%で、グラフの形はもはや「M字型」とは呼びにくくなっている。
それでは今日では、大部分の女性が結婚・出産の時期にも働き続けるようになり、退職する女性が1割以下になったということだろうか。そうではない。
M字型の谷間が浅くなった主要な原因は、女性のライフコースが多様化したことである。1982年からの40年間で、女性のライフコースは大きく変化した。1982年当時は、大部分の女性が20歳代の半ばまでに結婚し、まもなく出産を経験した。そして出産までの間に、多くの女性が退職した。だから20歳代後半に労働力率が急落したのである。
ところが今日では、結婚年齢も出産年齢も多様化している。このため結婚・出産の退職のタイミングが前後に幅広くばらけてしまい、年齢別にみた場合には労働力率の低下が目立たなくなってしまったのである。
結婚・出産で離職する人はまだ多い
このことは、下の図表のグラフをみれば一目瞭然である。これはSSM調査データから、結婚・出産前後の女性の就業率をみたものである。横軸には年齢ではなく、結婚2年前、結婚1年後、長子出産1年後、末子出産1年後、末子出産6年後をとり、それぞれの時点での就業率を計算してグラフ化している。
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