線路を守る東鉄工業が「失敗できる」唯一の場所 実習線や「駅」、大型保線機械もある研修施設
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 6時30分
レールは外部とつながっていないが、道床バラスト(砕石)をつき固める「マルチプルタイタンパ」や道床を整える「バラストレギュレータ」、資材を運ぶ「軌道モーターカー」といった大型保線機械も実習用に配備。それらのメンテナンスを学ぶ検修庫もある。脱線などを想定した異常時復旧訓練もここで実施している。
研修センターの大きな特徴が研修棟に設置した安全研修室だ。過去に同社で起きた重大事故を展示や映像、VR(仮想現実)で学ぶことができる。同社人材開発部の村岡正部長は「本来なら隠したくなるような事故であっても、原因や背景を正確に情報開示することが安全面の向上につながると考えている」と説明する。
研修センターでは10人ほどの専任講師のほか、現場の所長や主任クラスの約100人が兼任講師を務める。陣川博朗所長は「兼任講師によって教える側の層も厚くなっている。昔は先輩の背中を見ながら自分で学ぶものだったが、個人の能力や配属された現場によってバラツキがないように基礎をしっかり教えて一人前に育てるのが研修センターの役目だと考えている」と語る。
「失敗できる」メリット
施設は自社グループだけでなく、協力会社の社員の研修や資格の取得、業界関係者の見学などで幅広く活用する。高校生や大学生のインターンシップといった採用面にも役立てるほか、地域住民向けの「ふれあいイベント」や小中学生向けの職業体験も開催している。
実際の営業線でのメンテナンス工事は、夜間の終電から始発電車までの限られた時間内に終わらせなくてはならない。陣川所長は「『失敗ができる』というのが研修センターの大きなメリット。昼間にゆっくりと確認をしながら実習することができる」と強調する。
最近では線路部門は2023年8月開業の芳賀・宇都宮LRTの軌道、2024年3月開業の北陸新幹線敦賀延伸のレールの敷設などの新線工事に携わった。土木・建築部門は鉄道インフラの耐震補強工事で強みを発揮する。村岡部長は「研修センターを活用して人材育成を強化し、さらに難易度の高い工事にも挑戦していきたい」と話す。
業界を問わず人手不足が深刻化するなか、充実した研修施設やカリキュラムを用意できるかが、人材確保のカギを握ることになりそうだ。
橋村 季真:東洋経済 記者
-
-
- 1
- 2
-
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「線路残しておいてよかった」“途切れた臨港鉄道”奇跡の再活用なるか 「皆さん鉄道使えるなら使いたい」
乗りものニュース / 2024年6月20日 8時12分
-
南北線「延伸」に向けた動きが本格化! 品川駅周辺の土木工事が始動へ 利便性大幅アップ
乗りものニュース / 2024年6月18日 7時12分
-
大量の土砂、えぐられた線路 大井川鉄道の被災区間を歩く
47NEWS / 2024年6月14日 11時0分
-
【神奈川大学】本学の教員が研究開発に関わる工事支援ロボットが「JECA FAIR 2024 ~第72回電設工業展~」で紹介されました
Digital PR Platform / 2024年6月10日 14時5分
-
大雨被害で一部区間運休のJR山陰線…22日からの部分運転再開に向け試運転はじまる
KRY山口放送 / 2024年6月7日 17時24分
ランキング
-
1FRBの利下げ開始「9月」の見方強まる…6月の米雇用統計、人手不足の緩和傾向で
読売新聞 / 2024年7月6日 22時30分
-
2ラーメン業界の革命児「一蘭」幹部に聞く 最高益をたたき出した「3つの要因」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月6日 11時25分
-
3日本の中古車相場が「ロシア」の影響で下落!? 厳しい「輸出規制」のなかで「売れている」クルマも? 意外な“ロシア行き日本車”とは
くるまのニュース / 2024年7月6日 12時10分
-
4株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか 岸田政権の大きな政策ミスを教訓にできるか
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 9時0分
-
5「楽天ブラックカード」これまで招待のみだったが、申込受付を開始 特典は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月5日 13時7分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)