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難しい哲学が一転しておもしろく感じるプロセス 哲学YouTuberがひもとく、哲学の秘話

東洋経済オンライン / 2024年4月19日 16時0分

こうして、中世で展開された思想が保存されるとともに、ルネサンス期に古代作品の再発見がなされます。このような伝統を受けた近代において、はじめて古代からの哲学史が登場します。

もう1つ、物理的な観点からの話もあります。当たり前ですが、作品を保存するには、それを書く紙が必要ですよね。古代ギリシア時代の紙は、主として「パピルス」という草を原料にしていました。しかし、パピルス紙は何百年単位での保存には適しておらず、新しい紙に書写し直すことで作品を保存してきました。これらを「写本」といいます。

古代末期から中世にかけて、「羊皮紙」など、動物の皮を原料にした紙が用いられるようになりました。羊皮紙は貴重でしたが、そのぶん長期保存に適しており、重要な著作が厳選されて羊皮紙に書き写されました。書き写す仕事をしていた人々のことを写字生といい、修道院で生活するキリスト教聖職者の重要な仕事でした。

また、羊皮紙は再利用されることもあり、書かれた部分を薄く削って別の作品が書かれました。主に、古代ギリシア・ローマの作品を削り取って、キリスト教関係の作品を上書きしました。現代の科学技術によって、削り取られた部分も一部復元されて、貴重な作品が見つかったこともあります。

たとえばプラトンの著作で、現存する最古の写本は9世紀に書かれたものです。今から1200年ほど前の書物が残っているのは驚きですよね。しかもネット上で無料公開されています。プラトンが生きていたのは紀元前4世紀ですから、今からおよそ2400年前です。プラトン作品の最古の書物は、ちょうど1200年の時を挟んで現代に伝わっているのです。

キリスト教は、アレクサンドリア図書館の焼き討ちなど、異文化にとても非寛容で、破壊するというイメージがあるかもしれません。しかし一方で、古典作品を保存・維持する作業も連綿と行われ続けていたのです。

今でも古代・中世の文学や哲学・科学を知ることができるのは、羊皮紙の利用と写字生の几帳面な仕事のおかげです。貴重な作品を後世へ残すという使命のもとで、伝統を守り続けてきたからです。

哲学は人類最高の叡智の結晶!?

哲学史のモデルは、ヘーゲルやヘーゲル主義者、あるいは新カント学派と呼ばれる、19世紀に影響力を持ったドイツの哲学者たちによって発展した哲学史です。

ヘーゲル『哲学史講義』の序文はかなり奮っています。哲学とは、人類の最高の叡智の結晶であるとか、各時代に現れた最大の知性の煌めきを見出すことが哲学史という学問の使命である、などと述べています。

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