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24年春「私鉄新ダイヤ」コロナ禍脱してどう変化? 目立つ「小さな改善」削減された列車の復活も

東洋経済オンライン / 2024年4月19日 6時30分

西武新宿線は2024年春のダイヤ改正で本数がコロナ前の水準に戻った(写真:Nozomi/PIXTA)

3月に鉄道各社が実施したダイヤ改正。首都圏の通勤路線では、朝夕の快速廃止で物議を醸している路線がある中で、速達列車の停車駅の見直しや各駅停車との接続の工夫によって便利になった路線も複数ある。すでに改正の効果や影響を実感している人も多いだろう。

【写真を見る】ダイヤ改正で夕方の本八幡方面行き急行が増えた都営新宿線、快速が八潮駅にも停車するようになったつくばエクスプレス・・・ほかには?

また、コロナ禍で減らした列車の本数をかつての状態に戻したケース、逆にさらに減らしたところなど、線区によっても明暗が分かれている。そんな2024年春のダイヤ改正について、関東の私鉄各社の中で注目すべき点をまとめてみた。

2つの「新宿線」改善

西武鉄道と都営地下鉄の両方にある「新宿線」。両線に実際のつながりはとくにないが、今回のダイヤ改正ではこの「新宿線兄弟」でコロナ禍からの復活といえる改善がみられた。

西武新宿線は2022年3月のダイヤ改正で、日中10分サイクル(運転間隔)だったのを平日の日中のみ12分サイクルに変更し、急行と各駅停車を1時間当たり1本ずつ削減していたが、今回のダイヤ改正で元の10分サイクルに戻った。つまり毎時2本の増発だ。改正前のダイヤでは、とくに下落合駅では特急が間に入る場合などは最大で14分待ち(2022年春改正時点)になっていたが、ようやく一般的な都市鉄道と言える間隔に戻ったのは喜ばしいことである。

都営新宿線では、風前の灯となっていた急行が増えた。夕ラッシュ帯の速達列車を削った京葉線とは真逆に、むしろ夕ラッシュ時、17時~19時台の新宿発本八幡方面行き急行を従来の1本から4本に増やしたのだ。東京都交通局はダイヤ改正発表のページに「圧倒的、速度感。」とのキャッチコピーを付けたほどの力の入れようだ。

急行は、途中の大島駅で各駅停車に連絡する体系となっている。これまで急行が絶滅寸前となっていた中、費用をかけて整備した追い越し設備を活用しないのはもったいないといった声があったようだ。そこでどうすれば利用を増やせるか考えたのは都営のえらいところで、利用が少ないからと工夫も何もせずに通勤快速を廃止した千葉の赤い帯の電車とは大違いである。

ただ、SNSなどで見られる利用者の意見では「本気で利用増を考えるなら都心部の停車駅を増やせ」との声が根強い。また、急行が増えたと言っても現状の30~40分間隔では、たまたま急行が来るタイミングに駅にいる人しか使えない状況だ。「圧倒的、速度感。」とまで言うのなら、せめて均一20分間隔くらいで急行を運転してもらいたいものだ。一方で、日中は各駅停車のみ毎時11本だったのが10本となり、さらなる減便が行われている。

使いやすさ向上?東急新横浜線

2023年3月の開業から1年経った東急新横浜線。同線は日中1時間に2回、15分も間隔が開いてしまうダイヤだったが、今回の改正ではその開いたところを埋めるように毎時2本増発された。これは毎時8本ある日吉駅折り返しの東急目黒線各駅停車のうち2本、南北線直通系統の列車を新横浜駅まで延長運転するもので、これにより日中の新横浜方面行きは6〜15分間隔だったのが7〜8分間隔に是正された。

ただ、新横浜発都心方面行きについては2〜12分間隔といういびつさだ。これには路線特有の事情がある。新横浜駅には折り返しのために列車を長時間停められる線路が1本しかなく、同駅発を均等にしようとすると1本が待機している間にもう1本折り返し列車が来てしまうため、その前に列車を出さなくてはならない。また、東京メトロ南北線の車両は新横浜駅から先の相鉄線に入れないため、同駅で折り返さなくてはならない。

ただ、それでも間隔を最大12分以内にするよう配慮した、というのが今回の改正内容である。その結果、上りは間隔がいびつでも、極力使いやすくなるような配慮がなされている。

新横浜駅毎時24分・54分発の目黒線急行は、日吉駅で東横線の急行和光市行きに接続する。これにより日中の新横浜―渋谷間は、従来の直通急行(所要28分)や、武蔵小杉で後続の特急に乗り継ぐ(所要30分)よりも速く25分で行ける乗り継ぎパターンが生まれた。また、新設の新横浜駅毎時05分・35分発の目黒線各駅停車は、田園調布駅で東横線の急行渋谷行き(一部副都心線直通)に接続するようになり、このパターンでも新横浜―渋谷間を30分で行けるようになった。

また、新横浜駅では小さな改善もみられる。開業直後の2023年3月31日付記事(複雑ダイヤ「新横浜線」ちょっと便利な乗り継ぎ術)で取り上げた、同じホームの発着なのに東急線からの列車が相鉄線側のドアを開けず、同駅始発の相鉄線列車に乗り継げなかった問題については、始発の相鉄線が中線の2・3番線からの発着に変更されたことで解消された。

TX快速、初の「埼玉停車」

ダイヤ改正で新たに快速の停車駅が増えたのがつくばエクスプレス(TX)だ。各駅停車との接続が可能な八潮駅が新たな停車駅で、埼玉県内の駅としては初めて快速が停まることになった。

つくばエクスプレスは長らく快速停車駅を増やさず、最近のホーム8両化工事に伴う徐行運転の実施や、電力節約のために定速運転を取りやめる中でも秋葉原―つくば間45分を維持するために停車時間の調整などで対応してきた。

もともと、つくばエクスプレスの快速は主要駅での停車時間が最大1分半と長く、余裕を取りすぎているくらいであった。今回、北千住―八潮間の徐行運転終了に伴い、その余裕時間を使って秋葉原―つくば間45分を維持したままで八潮駅への新規停車を実現した。

ただ、時刻表上の所要時間は45分だが、実際に測ってみると45分30秒で走っている。そのため、つくば駅の発車時刻は毎時12分30秒または42分30秒となっており、秋葉原まで46分かかるように見えてしまうこともある。それでも時刻表上の表示は45分なので、秋葉原駅に毎時27分・57分に着く快速は、(27分・57分の)55秒着になるように運転士が頑張るなど、運転士泣かせのダイヤになっている印象だ。

また南流山駅では、八潮で後続の快速の待ち合わせをする各駅停車の発車が快速発車の2分前とかなり間隔が短く、ダイヤ改正当初は快速が八潮の手前で各駅停車に追いついて詰まってしまうことがよくあった。今は、快速はいつもよりゆっくり走らせて、各駅停車は南流山を発車時刻の00秒に発車できるよう運転士たちが頑張っている。

ともあれ、この快速新規停車で八潮だけでなく、隣の三郷中央駅の利用者も快速を利用できるようになった。利用者が少ないからと途中駅の追加停車も検討せず通勤快速をなくしてしまったどこかの鉄道会社とは大違いである。

北千住駅でつくばエクスプレスと接続する東京メトロ千代田線は、夕ラッシュ時の北綾瀬駅直通列車が1時間最大6本まで増えた。日中は20分おきと本数は少なくても均等な間隔で北綾瀬行きが来ているのに対し、夕ラッシュ時は全体の本数に対して北綾瀬行きの本数が少なく、綾瀬駅で階段を使って同駅始発の北綾瀬行きに乗り換えるほうが速いケースが多かった。

今回の改正で北綾瀬行きが増えたのはいいが、それが5〜10分おきに来たり、連続で来たりすることがある一方で、30分近く来ないこともあるといった「不整脈ダイヤ」であることは変わらない。もう少し乗車チャンスの偏りは改善できないものか。

余談だがこの北綾瀬行きの不均等なダイヤにより、直通先の小田急線登戸駅では、北綾瀬行きが2本並んで同時発車するシーンが見られる(登戸駅21時06分発急行北綾瀬行きと、各駅停車北綾瀬行き)。

終電間際に助かる小さな変化

その小田急では深夜、下北沢駅の急行停車ホームが変わった。上り列車は0時03分発急行新宿行き、下り列車は0時08分発急行海老名行き(新百合ヶ丘から各駅停車海老名行き)以降のすべての列車は、本来急行は地下2階ホーム発着のところ、地下1階ホーム発着となった。

終電接続を気にしながら急いで急行に乗りたい人にとっては、いつもは地下2階まで降りなくてはならないところ、移動が短く済むので助かるようになったというケースも多いだろう。しかも終電前に地下2階ホームの閉鎖ができれば、駅員の終電後の業務が軽減されて労務環境的にもいい。一石二鳥ではないか。

いかがだったであろうか。首都圏の輸送を担う鉄道でも、湾岸部の某線を運行するどこかの会社とは違って速達列車の使い方の工夫が見られた線区と、運転間隔に課題が残る線区とに分かれたのが今回の私鉄ダイヤ改正の印象だ。来年はどのようなダイヤ改正になるか。さらなる利便性向上に期待したい。

北村 幸太郎:鉄道ジャーナリスト

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