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「脱炭素の次は水」。企業が迫られるリスク対応 先進企業から学ぶべき「流域での連携」戦略

東洋経済オンライン / 2024年4月20日 8時0分

とは言え、一足飛びに現場での取り組みを開始しようとすると、多くの障壁が想定される。企業にとって重要なサプライチェーンはどこなのか、トレーサビリティは確立できるのか、そこでの水リスクはどんな状況なのか、社内での共通理解を得られるのか、などについて見定める必要がある。 そこで責任ある水利用管理では、持続可能な水利用管理に向けて、5つの段階的なステップを提示している(下図)。

アパレル産業でも取り組みが始動

責任ある水利用管理は、食品産業だけの取り組みではない。

例えば、テキスタイル・アパレル産業では、綿花生産や染色工程などにおいて、淡水資源の過剰利用や汚染排出が問題視されてきた。

トルコ南西部を流れるブユック・メンデレス川流域では、染色工場や綿花農場が広がる中流から下流域までの地域を対象として、責任ある水利用管理の考え方に則った流域管理の取り組みが進められている。

綿花生産地で灌漑用水の削減に試験的に取り組んでいるほか、ステークホルダー間の協力により、下流の湖で水質や生物多様性の調査をしている。 現地の工場、農家、行政だけではなく、原料を調達している複数のヨーロッパのアパレル企業などが参画しているのが特徴だ。

気候変動の影響が増大していく中で、水の視点でサプライチェーン管理に向けた取り組みを開始する企業が増え始めている。

では、日本企業が取り組むうえでどういった課題があるのだろうか。

商社がからむことが多い日本のビジネス形態では、特にトレーサビリティの確保が困難になる。すべての輸入産品をトレースすることはほぼ不可能だが、バリューチェーンのどこで取り組むべきか、適切に優先順位付けすることが肝要だ。

第一歩はバリューチェーンの水リスク分析

第一歩として、自社の関わる水リスクの全体像をつかむために、重要品目の原材料調達を含めたバリューチェーンの水リスク分析を行うことが推奨される。そのために、Water Risk FilterやAqueductなどの無料で公開されているグローバル・ツールを使用し、どの流域にどのような水リスクがあるのか、自社ビジネスとの関わりを把握することを推奨したい 。

優先流域が絞られてきた段階では、 正確に現地の水リスクとそれを取り巻く環境を把握することも非常に重要なステップとなる。

近年、 サステナビリティ経営への関心も高まっている。目標設定の枠組みであるSBTs for Natureや、情報開示の枠組みであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいて対応を開始していくことも投資家の信頼を得るきっかけの一つになるだろう。

グローバルに事業を展開する企業は、世界の水に事業を支えられている。事業の継続に不可欠な「水」への責任あるコミットメントが期待される。

羽尾 芽生:WWFジャパン 自然保護室淡水グループ

並木 崇:WWFジャパン 淡水グループ長

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