安倍元首相の不毛な宣言が日韓関係の改善を縛る 元徴用工問題、日本も人道的に歩み寄るべきだ
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 9時30分
韓国の総選挙は、結局、保守系与党「国民の力」が敗れた。改選前でさえ国会(定員300)で114議席と、過半数を占めていなかった少数与党状態が、今回108議席とさらに議席を減らしたのだ(114→108)。
実は、選挙戦終盤にメディアで大きく報じられたイシューの一つは、進歩系最大野党「共に民主党」の候補による放言であった。過去に「梨花女子大学の初代総長が学生たちをアメリカ軍将校たちに『性上納』していた」と根拠も示さぬまま述べていたことが露呈したのだ。
直前の敵失が追い風にならなかった与党の惨敗
これには他党や梨花女子大の卒業生たち、それに多くの女性団体が一斉に反発して立候補辞退を迫る騒ぎとなった。くだんの候補は平身低頭で発言を謝罪・撤回したものの、立候補は取り下げず、「共に民主党」の李在明代表もほぼ知らんふり。そうした開き直りのような態度に世論はさらに硬化。土壇場での敵失で与党に思わぬ追い風か、とも目された。
しかし、投票箱のフタが空けられると、そうした失言は尹錫悦大統領の不人気を帳消しにするにはまったく至らなかった。「共に民主党」や曺国元法相の新党「祖国革新党」が大きく議席を伸ばす結果となった。「性上納」発言議員も、僅差ながら小選挙区で当選した。
つまりは、どうあっても尹政権に対する「ダメ出し」は避けられない情勢であったわけだ。尹大統領の国政運営に対する逆風はさらに強まっている。
ただ、俯瞰してみれば尹政権に大きな失政はなかった。むしろ、文在寅前政権が「やろうとしたけど、できなかった」課題解決を、尹政権は矢継ぎ早にやってのけてきたと評価することが可能だ。
そうした前政権からの積み残し課題の筆頭といえるのが、徴用工訴訟をめぐって極度に悪化した日本との関係改善だ。韓国大法院(最高裁)の判断を迂回する形の第三者弁済という尹政権の解決策は、日本では称賛されても韓国内では批判がやまない。
「日本からの圧力で韓国の司法判断がないがしろにされた」と反感を覚える韓国人が多いのは自然なことだ。どれほどの影響を与えたかを数値化することは難しいが、尹政権の支持率低迷の一因となってきたのは否定できない。
難しくない外交に終始する岸田文雄政権
であればこそ、日本の政府・経済界は今回の総選挙を見据えて尹大統領を「援護射撃」すべきであったのだが、「熱しやすく冷めやすい」かのように徴用工訴訟問題の後続措置に対する関心は低下した。
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