当事者すべてを「ハッピー」にしたイランの報復攻撃 イランがイスラエルからの報復を恐れずに攻撃できる理由
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 17時0分
「シリアを失ったらテヘランを守ることはできない。仮にフーゼスターン州アフワズを失ったとしても、シリアを保持し続けていれば、フーゼスターン州は取り戻せる」
「シリアは(イランの)第35番目の県で、戦略的に重要な県である。もし敵が攻めてきて、フーゼスターン州とシリアのどちらかをあきらめなくてはいけなくなった場合、シリアを取るべきである」
このようにシリアの重要性についてひとしきり語ったのち、市街戦を戦ううえではシリア政権を支援する必要があるとして、さらに次のように発言した。
「シリア政権は軍を持っているが、都市で市街戦を戦う能力に欠けている。このため、シリア軍に代わり市街戦の任務を担う6万人規模の動員部隊を編成して、市街戦に備えるようイラン政府に提言した。」
前述の「アンマルソフトパワー戦争戦略本部」とは、2009年のイラン大統領選挙後、イラン・イスラム共和国に対する「ソフトパワー」攻撃に対処するために設立された。
イランの著名政治家やイラン国内で「アンサール・ヒズボラ(アッラー党支持者)」という名で知られる最高指導者ハメネイ師を支持する聖職者たちが所属している。
イランから見た地中海への戦略的ルート
イランはイスラエルとの戦いにおいて、イラン・イラク・シリア・レバノンを通る地中海へのルートを戦略的要衝とみなしている。
それに加えて、筆者が注視しているのは2023年12月23日に、イラン革命防衛隊の指導者が「ジブラルタル海峡を封鎖する」と脅したことだ。
イランはこれまで「ペルシャ湾の入り口のホルムズ海峡を封鎖する」「(イランが支援する)イエメンのフーシ派を使って、紅海入り口のバブアルマンダブ海峡を封鎖する」とたびたび脅してきた。
実際に、アルジェリアにイラン革命防衛隊の基地ができ、軍事訓練が行われている。アルジェリアや西サハラに展開し、西サハラにおける独立国家建設を目指す「ポリサリオ戦線」(サギア・エル・ハムラおよびリオ・デ・オロ解放人民戦線)を使ってジブラルタル海峡を封鎖するという脅しであった。
この3つの海峡が封鎖されたら海の物流はマヒし、世界経済は大打撃を受ける。
他にもイランはウラン濃縮を早めて核爆弾を製造するなど、さまざまなカードを持っている。だから、イランは報復を恐れずにイスラエルを攻撃できたのだ。
入念にじっくり時間をかけて計画されたイランのイスラエル攻撃は、当事者誰もがハッピーになるものだった。
イランの攻撃は当事者すべてにハッピー?
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