機能性食品で「怪しい健康食品」を取り除いている 阪大・森下氏が指摘する「小林製薬問題」の本質
東洋経済オンライン / 2024年4月21日 8時30分
機能性表示食品は健康被害の情報収集が義務付けられているから、早く被害に気づけた面もあるだろう。問題のサプリが機能性表示食品だったのは、不幸中の幸いとも言える。
今後、機能性表示食品での健康被害報告は(法的に)義務化したほうがよいと思うが、何を報告するかの判断が難しい。医薬品であれば、健康被害との因果関係を医師が判断するが、消費者による報告は因果関係の見極めができるのか。実際に小林製薬のケースでは、医師の報告で問題が表面化した。
――届け出のみで表示できる機能性表示食品よりも、国が認可するトクホ(特定保健用食品)が再評価される流れになるでしょうか。
機能性表示食品制度は規制緩和と言われるが、そうではない。いわゆる健康食品といわれる広義の健康食品には、もっと怪しいものがある。昔はイメージだけで売っているものも多く、あまりに怪しいから有効性と安全性を厳しくしたのが機能性表示食品。むしろ規制強化だ。
安全性に関しては、何かあれば早期に情報を収集する点で、トクホと機能性表示食品は一緒。機能性表示食品は有効性に関する論文などにおいて、情報の公開度はトクホより高い。
またトクホは基本、対象商品だけによる1つの臨床試験での承認であるが、機能性表示食品では文献のシステマティックレビューを用いており、多くの報告に基づいたエビデンスも多い。場合によっては、メタ解析によるレビューもあり、非常にエビデンスレベルの高い届け出もある。そこをメディアは間違って報道しているような印象がある。
さらに機能性表示食品では事後の品質分析をするが、トクホではされていない。実際、トクホを分析をしたら、有効成分がまったく入っていなかったという事件もあった。
サプリ全体で売上高が10%落ち込んでいる
――森下さんが副理事を務める日本抗加齢協会では、機能性表示食品の届け出のサポートをしているのですね。
年間数十件ほどの相談がある。届け出は「てにをは」が難しい。トクホのような審査であれば、何がだめだったかわかるのだが、届け出の場合はなぜ却下されたかがわからず、サポートが必要とされる。届け出の根拠に使う、研究レビューを作成することも支援している。
――小林製薬の問題発覚が、機能性表示食品の市場に冷や水を浴びせることになっているのでは。
すでに足元では、サプリ業界全体で売り上げが10%ほど落ち込んでいるというデータがある。トクホ含めてだ。消費者がトクホと機能性表示食品の違いをわかってないからだろう。
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